本研究では、身振りや手振り自体の身体表現を拡張する基本概念を導入することで、通常の人間以上の表現力を持つ遠隔協調作業の提案と実現を目指す。まず、プロジェクタと深度センサや光学トラッカで構成された身体表現を抽出し拡張する指示者側システムを構築する。そして、この全身の身体表現を抽出し拡大縮小表現・各種VFXによって表現を拡張するシステムと、HMD+HMCで構成された現場の作業者が用いるシステムを接続し、ユーザビリティテストによる効果測定を実施する。次に、身体表現を抽出し拡張する指示者側システムを、センサルームの導入と高解像度HMDを用いて没入型へと発展させる。そして、拡張身体表現によって通常の人間以上の表現力を持った遠隔協調作業での利点と限界を明らかにする。
平成29年度の研究実績として、前年度までに実装されていた「仮想身体サイズによる対人距離の視覚的拡張」を実現したシステムに対して、両眼立体視が可能な機能を実装し、これを評価した。これにより、より現実世界に近い形でHMD内に写っている人間の拡大縮小表示が可能となった。さらにシステム全体として、現実世界と仮想世界のスケールの違いを考慮し、違和感を無くすのを目標にするのではなく、より作業をスムースに行えるような効果音または音声の再生方法を目指した。そして、拡張身体表現を有する遠隔協調作業システムの利点と限界を明らかにした。また、これまでの成果を整理し、前年度までと比べ対外的な発表を多く行った。
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