研究課題/領域番号 |
15K00272
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
川波 弘道 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (80335489)
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研究分担者 |
神原 誠之 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (10346306)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 音声インタフェイス / 音声対話 / 声質変換 |
研究実績の概要 |
本研究課題は情報機器の使用に抵抗や不安を感じたり馴染めなかったりすることが理由で、セキュリティ的にも物理的にも安全な環境であるにも関わらず情報機器から受けうる便利さや暮らしやすさを享受できていない人たちが、情報機器を利用できるように支援するための技術の研究である。ここではユーザにとって負担の少ない音声をインタフェイスとした音声情報案内システムを想定している。ユーザが現状の情報機器に親しみにくい原因の一つとして、人間同士の会話では同調的な発話が観察されるのに対して、従来の対話システムではユーザの発話の特徴にかかわらず画一的な応答を行っていることが考えられる。そこでユーザの話し方と語彙に合わせた応答を行う手法の研究とシステムの開発に取り組んでいる。 初年度である平成27年度はユーザのイントネーションとリズムといった韻律的特徴と語彙をそろえた応答音声の合成手法について文献と論文の調査を行った。また実証実験用のプラットフォームとして高齢者の見守りシステムを想定したポータブルな対話システムの実験環境の開発を進めた。 前者のユーザの韻律的特徴の模倣は、ユーザのピッチ周波数を基本周波数モデルの特徴量として抽出し合成音声に使用することと、自動認識結果から算出した時間当たりの発話数、モーラ(拍)数とその変動を合成音声に反映させるという計画通りの手法で進める。語彙の同調もシソーラスを参照して、ユーザ発話の自動認識結果と応答テキストの間に類義関係の語が存在する場合にはユーザのものに統一するという方法を用いる。また、後者のプラットフォーム開発に関しては開発が進み、エージェントとの対話部分はまだ予備的なものだが、移動履歴や画像記録を自動的に行う包括的な生活ログソフトウェアとしてパイロットシステムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はユーザ信頼感を得るための韻律的特徴と語彙の同調手法について調査を行い本課題の目的に適した手法を決定するとともに、別途、実証実験のプラットフォームの開発を行った。 ユーザを模倣した音声とテキストの生成については、計画ではそのソフトウェアのひな型を開発する程度を想定していており、そこまでには至らなかったが、将来的に評価実験を行うため実験プラットフォームの開発が想定よりかなり進んだだめ、計画から順序の入れかわりはあったものの大局的には課題遂行の点で順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は計画時期よりも早く実験プラットフォーム開発に着手したところ、それが著しく進捗した。平成28年度は本来の初年度計画であった韻律特徴の同調的音声、テキスト中の語彙の統一、声道長制御により声質を近づけた同調的音声の合成プログラムを作成し、最終年度における、ユーザが継続的に利用した場合の同調的音声の効果の評価実験に向けて準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
雑談会話システム開発のための小型ペットロボットを購入する予定であったが、現時点の目的のためには既存の機材を用いて開発が可能であったことから、次年度以降に最新の製品を精査して購入することが適切であると判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、音声の特徴量抽出と変換を高速に行うためのPCとシステム開発のための小型ペットロボットを購入する。また開発したシステムの予備実験の被験者への謝金、情報収集と提案手法の発表のための国内外旅費として使用する。
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