近年の大型テレビ受像機の急速な普及と2020年開催の東京オリンピックに向けた次世代ハイビジョンシステム(4K/8K)の開発加速、スマートフォン・タブレット端末の急速な普及、また、TVゲーム機器の立体表示(3D)化など、我々を取り巻く視環境は急速に変貌している。しかし、技術進歩を一歩誤れば、人間の視覚系に過度の負荷や適応不全を与える事態も予想される。 そこで、このような事態を未然に防止し、より多くの人が安全で快適な視環境を入手できるように、本課題においては、特徴的な視環境の変化に対応し、(1) 大型・高精細表示環境、(2) 立体表示環境、(3) 2色覚者に配慮したユニバーサルカラー表示環境、における人間の視覚認知特性を理解し、併せて新しい表示機器の開発に資することを研究の目的としている。 さらに2年目に新たに取り組んだ課題として、「スマートフォン・タブレット端末の急速な普及が引き金となって我々を取り巻く視環境は急速に変貌し、その結果として現実に人々の認知能力に問題が発生している証左をつかむこと」にも注力した。 最終年度である本年度は、上記の結果をまとめて対外発表を行った。まず、2017年5月開催の「SID DW 2017」では、(1) ハイダイナミックレンジ(HDR)画像を通常の環境用のスタンダードダイナミックレンジ(SDR)画像に高速かつ容易に変換するための新しい心理物理的知見の発見、(2) ICTを活用することで若者の認知特性に変化が生じている実態とそれに対応した最近の新しい携帯端末コンセプトの提案、の2件を発表した。また、2017年12月開催の「IDW 2017」では、2色覚と3色覚の連続性に関する新たな知見について発表した。その他、関連する複数回の招待講演を行ない、知見の普及に努めた。
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