研究課題/領域番号 |
15K00279
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
竹川 佳成 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (60467678)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 補助機能 / 補助からの離脱 / 技能 / アノテーション / 言語化 / ピアノ |
研究実績の概要 |
本年度は以下の3つの研究を主に推進した. 1. 楽器演奏において効率的に楽譜を暗記するための支援システムを開発した.楽器演奏者はコンサートやライブにおいて楽曲を暗譜して演奏することが一般的である.しかし,暗譜には,楽曲を何度も演奏したり聴いたりする必要があり多大な労力を必要とする.この問題を解決するために,楽曲中のフレーズ間の類似度に着目し,類似しているフレーズ間の共通点および相違点を提示する機能を提案した. 2. ピアノ演奏において学習者に練習状況の可視化や言語化をさせることによる学習効率の向上に寄与するシステムを開発した.ピアノの初心者は,自身の苦手箇所や練習の進捗を上手く把握できないため,効率的にピアノを練習することができない.成人のピアノ初心者の効率的な練習を実現するために,打鍵情報をもとにピアノの練習の状況を可視化する機能と,譜面上に気づきをアノテーションする機能を提案した. 3. ピアノ演奏において補助情報を中長期間利用した時における学習方略の変容について調査する研究を主に行った.補助機能を利用した技能習得モデルに貢献する重要な知見が得られた.具体的には,実験結果から得られた考察より,成人学習者は過去の成功体験に基づく各自の学習方略をもっており,いずれの被験者も自身の学習方略を基準にシステムを利用することがわかった.また,打鍵ミス数を分析したところ,自身の学習方略とシステムの学習方略が適合した被験者は,課題曲および評価曲の到達度テストにおける打鍵ミス数が減少した.一方,学習方略が部分的に適合した被験者やシステムの学習方略に適合しなかった被験者は基礎的な打鍵技能の向上はみられたが,応用的な打鍵技能に関しては低下あるいは学習方略適合型の被験者ほど向上しなかった. これらの一連の研究の成果は,学術論文誌3件に採録された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1および2に関しては,本研究課題で目的とする補助機能の提案,補助からの離脱機能の提案に該当する.また,3.に関しては,「いつどのようなタイミングで,どれくらいの量,どれくらいの期間,補助機能を適用すると,その課題をどれだけ早く正確に実施できるようになるか」という技能習得モデルの構築に貢献する成果といえる.一連の研究成果は交付申請書に記述された内容に即したものである.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては,基本的に当初研究計画に沿って進める予定である.本年度で取得した実験データをもとに,「いつどのようなタイミングで,どれくらいの量,どれくらいの期間,補助(あるいは離脱)機能を適用すると,その課題をどれだけ早く正確に実施できるようになるか」という点について,被験者実験により継続的に調査分析し,統計的機械学習アルゴリズムを用いて数理モデルを構築する.構築した数理モデルを用いて自動的に補助機能や離脱機能の適用度を変更する機能を提案する.
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