本研究では、今日の少子高齢化や地域の過疎化に伴い、伝承が難しくなっている民俗芸能の踊り(踊り)の伝承を支援するために、VR技術を用いた新しい伝承環境を開発することを目的とした。あたかも踊りが演じられている所で、踊りを観る体験、踊り演じる体験のできる伝承環境の構築を目指す。踊りは地域の人々の協働作業で伝承されて来たことを鑑み、この伝承環境は地域の人々の協働作業で構築できるようにする。 平成30年度では、まず、前年度までに使用したモーションキャプチャ(MoCap)の問題点を解決するために(位置精度と時間精度の向上)、本学で導入したXsensMVNを使うことを検討した。両MoCapはモーションデータを共にBVH形式で出力できるので、前年度に検証したCGアニメーション(CG)制作手法(踊りの収録、モーションデータの変換、MikuMikuDanceでCGを制作)を変更なしで使えること、XsensMVNは位置精度と時間精度に関して格段とすぐれていることを確認した。 次に、地域に残る500有余年の歴史を持つ民俗芸能の黒川能の舞を11曲、地域の夏祭りで演じられている酒田甚句の踊りを収録した。位置精度の向上により動きの再現性が大きく向上したこと、時間精度の向上により動きと楽曲を容易に同期できることを確認した。舞台のモデルは写真を用いたテクスチャマッピングで制作する簡易な方法を考案した。これにより、地域の人々の協働作業で高品質のCGを制作できて、バーチャルに踊りを観る体験のできる伝承環境を構築できた。バーチャルに踊りを演じる体験は、このCGに、参加者の動きで踊るモデルを重畳することによって実現できる。 本研究では、この伝承環境を広く公開することを目指していた。プロトタイプを作成して予備実験を行なったが、Web公開するには至っていない。設備は整っているので、できるだけ早い時期に公開を目指す。
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