平成29年度は,手形状識別に加えて,指先の接触認識,識別にも取り組んだ.指先に入力する振動は,1000から2500Hzであり,0.1秒間のスイープ信号である.識別・認識には,パワースペクトルを特徴量として採用し,計算コストを削減するために前処理として次元の圧縮を行っている.識別器には,サポートベクターマシンを採用し,人差し指の接触認識,5指いずれかの接触状態の認識,さらに5指すべてに対する接触の識別を試みた.Leave-one-out 交差検定を用いて評価を行ったところ,結果は人差し指の接触認識では97%程度,5指いずれかの接触状態の認識では95%,5指すべてに対する識別では77%の精度であった.指先接触面の影響についても考察を行い,複数の材質面で学習を行うことで,影響されることなく識別することができることを確認した.また,昨年度に引き続き,ペン型デバイスによる触覚提示にも取り組んだ.本年度は,直接取得した振動を再生するのではなく,カメラで認識したテクスチャ表面の情報を振動情報に変換することを試みた.視触覚変換したテクスチャでは,テクスチャの方向,太さの情報を知覚することができ,方向に特徴のあるパターンについては,高い精度で人が識別できることを確認した.視覚情報には,色相,彩度,明度など複数の情報が含まれるが,これを振動情報として人に伝えるには次元を圧縮する必要があり,実験を通して視触覚変換の課題を整理することができた.
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