研究課題/領域番号 |
15K00287
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
小林 稔 明治大学, 総合数理学部, 教授 (60738623)
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研究分担者 |
小松 孝徳 明治大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30363716)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CSCW / 画像インターフェース / ヒューマンインタフェース |
研究実績の概要 |
本年度は、表示方法に重点的に取組み、対象物を机上に置いて正面から撮影した画像を対象に、実物体と同じ大きさの印象を与える条件を探索すること、および、普及が著しいタブレット端末の使用を念頭に、表示装置の背景と画像中の表示物の背景を合わせる方法の検討に取り組むことを計画した。 研究開始時に実施計画を再検討する中で、展示施設等で近年用いられる空中に浮遊しているように画像を表示する方法に着目した。先行研究で取り組まれた画像中に背景等の距離感の手がかりとなる情報を含めず対象物だけを表示する方法は、物体が表示位置に存在するように感じさせることを意図したものだが、その実現のために、このような浮遊型の表示を用いることで、表示された対象物との距離感をより明確に感じさせる可能性があると考えた。そこで、タブレット端末を用いた方法の検討に先んじて、これを確認することとした。 具体的には、以下を実施した。1. 試験画像の作成:りんご程度の大きさの試料物体を多様な方向から画像を撮影した試験画像を作成した。 2. 浮遊型表示装置の作成:初期検討として簡便な材料で浮遊型表示を行なう実験系を作成した。3. 画像表示ソフトウェアの作成:表示画像サイズを被験者が調整できるソフトウェアを作成した。これらの作成物を用いて、初期的な画像表示実験を行なった。これを通じ、以下の課題を確認した。A. 試験画像の属性に関し系統的な整理が早い段階から必要、B. 表示装置の画質が不十分であるため物体の存在感を表現できていない、C. 表示ソフトウェアの調整機能が正確なデータを取得するには不十分。当初計画では、早期から新規の表示手法を試すことを想定していたが、本研究を適切に進めるためには、より系統的な情報の整理が必要であると再認識し、慎重に進めることとした。 これらの取組みを通じ、研究開始段階として基礎的な知見を獲得することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
追加項目として空中浮遊型画像表示による先行研究のアプローチの効果の確認を行ったことでタブレット端末を表示装置として想定した手法の検討が進まなかった点(理由1)、および十分なデータを取得できる実験が行なえなかった点(理由2)から、「やや遅れている」を選択した。 理由1の要因としては、計画の修正そのものと、装置の構成に想定以上に時間を要したことが考えられる。実験が進んでいない現時点において性急に結果を予測することは行わないが、この追加項目に関する取組みは、今後の研究の方向を適切に決める上で重要な知見を提供すると考えている。すなわち、本研究の目的の実現に対する2つのアプローチ(この追加項目で行なっている画像中の距離感の手がかりを取り除くことで距離の理解を限定する方法と、タブレット端末で行なおうとしていたように背景を含む画像を表示するなど距離の手がかりを積極的に埋め込む方法、の2つの方法)のどちらがどのように効果があるのかを、比較検討することを可能にすると言う意義を持つ。当初計画に対しては遅れることとなったが、当初の実施計画で十分に記載されていなかった側面についても配慮したバランスの良い研究を進める環境を実現するものであり、必要な遅延であったと考えている。 理由2は、安定した実験系を構築できなかったことに起因するものである。実験装置の構築について十分な資源を割り当てることができなかったこと、確実な実装方法を取らなかったことが要因として考えられるが、新規方法の初期段階の試験において少ない資源で試すことは妥当であったと考えている。一方で、装置構築に依存して実験ができないような進め方を設定したことについては反省すべき点で、今後検討が必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進においては、より適切に研究を推進するために、実験で用いる試験画像の収集に関し系統的な体系を用意することで収集の効率化を図ること、必要な品質の表示装置を早く確実に実現すること、実験内容を想定して十分な性能のソフトウェア設計を行なうこと等の対応が必要と考えている。 そのために、以下を当面の重点課題として推進する。1. 撮影データに関する記録様式の検討を行なう:研究目的に照らして必要充分な画像の収集方法を検討する。ただし、この検討においては、実験環境の開発に依存しない画像収集をすることが可能であるか否かも併せて検討する。それが可能な場合は体系に合わせた画像収集を推進することとし、可能でない場合は個々の実験に即した必要最小限の収集を行なう等、作業の効率化を図る。2. 確実な構成で実験装置の実現を進める:評価実験を可能な限り早期に実施できるように、より確実な構成の装置・ソフトウェアを早期に実現する。実験の目的をこれまで以上に深く検討することで起きうる課題の予見をできる限り行ない、より確実に進める。同時に実験対象とする表示方式の絞り込みを行ない資源の集中にも取り組む。 以上に加えて、計画では可能性があると考えられる多様な要因の調査や多様な実現方法に言及しているが、それらの中から特に効果が高いものや特徴的なものを重点化したり、それに絞り込んで実験を行なうように、計画遂行方法についても検討を加える。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究推進に必要な機材として新規にコンピュータ一台を購入したが、表示装置等の構築に必要なビデオプロジェクタ等の機材は、大学所有のものを必要に応じて一時的に使用することで対応可能であったため新規の購入を行なわなかった。また、本件に関する旅費支出を行なわなかった。以上の2点が、次年度使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度において、装置構成が固まった段階で、実装に必要なビデオプロジェクタまたはタブレット端末等の機材購入を行なう計画である。
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