研究課題/領域番号 |
15K00288
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
久米 祐一郎 東京工芸大学, 工学部, 教授 (20161713)
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研究分担者 |
水野 統太 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (00337875)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒューマンインタフェース / 力覚提示 / 力覚様感覚 / 振動刺激 / 指の筋群 / 筋紡錘 / 誘発筋電 / H-リフレックス |
研究実績の概要 |
平成27年度は当初の研究計画に従って振動刺激による神経-筋活動と力覚様感覚の機序の解明について電気生理的な客観測定に基づいた検討を行った。 力覚様感覚は指先に振動刺激を与えることによって生じる、指先に力が加わり押し上げられるような感覚である。この現象の機序として振動が指を動かす筋の筋紡錘に作用し筋が緊張すると予想された。この仮説を検証するために、指の伸展・屈曲に関係する筋の活動を誘発筋電法によって明らかにすることを試みた。上腕の正中神経を電気刺激して、指の筋から誘発された筋電のM波とH波の測定を行った。刺激条件を適切に選択することにより、表面電極を用いてM波とH波を分離して記録することに成功し、指先への振動刺激の有無によるH波の大きさと時間の変化を測定した。結果として振動の有無によりH波の振幅の大きさは有意に変化すること、その変化が安定するためにある程度の時間が必要であることが明らかになり、指先の振動刺激は指を動かす筋の活動を活性化することが判明した。 別の力覚様感覚の生起原因として指先への振動刺激による触覚受容器の関与にって生じる擬似力覚も考えられた。この仮説を擬似力覚によるものか検証するために、指先を経皮麻酔して触覚受容器の影響を排除した場合に、振動刺激による力覚様感覚の生起を調べる計画であった。しか角質層が厚い指先では経皮麻酔剤による触覚受容器の関与を排除することが難しく、検証実験の方法としては不十分であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は当初の研究計画に従って指先への振動刺激による神経-筋活動と力覚様感覚の機序の解明する予定であった。誘発筋電測定におけるM波、H波測定による筋活動の測定については、機器の導入、関連システムのの構築、予備実験、本実験と予定通りに進捗して、振動による筋活動の活性化について実験的に明らかにした。 しかしながら指先の触覚受容器の関与については、当初の予想と異なり経皮麻酔剤の効果が小さく予備実験を行ったものの、信頼性のある結果を得るための本実験へ進むことができず、実験方法の再検討をせざるをえなかった。 また当初の予定では指先への振動刺激の前腕への伝播についても同時に測定する予定であったが、申請時に導入予定であった振動感覚計の大幅な価格改定により、導入を見送らざるをえず、刺激測定方法を次年度見直すこととした。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定では平成27年度において研究計画に従って振動刺激による神経-筋活動と力覚様感覚の機序の解明行い、引き続き28年度にはデータの信頼性をあげる予定であった。触覚受容器の関与については、麻酔剤の効果が当初の予想とは異なり実験方法の見直しが必要である。これについては28年度に冷却による感覚受容器を麻痺させることにより、振動刺激の影響を調べる予定こととした。この方法による成果が得られれば当初の予定通りに研究の進行は可能である。 振動の伝播については他のデバイスを用いた刺激方法と計測方法を工夫することにより、28年度内には達成できる見込みである。 28年度においては、引き続き指先への振動刺激による神経-筋活動と力覚様感覚の機序の解明を進めるとともに、インタフェースデバイスの概念構築を行う予定である。また29年度は当初計画通りにインタフェースの開発と評価について研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時に購入を予定していた振動感覚計が採択決定前に大幅に値上がりしたため、購入を断念せざるをえなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
振動の人体内の伝播については測定器として校正された振動感覚計を用いずに、予算内で購入可能な加速度計と振動子を用いて研究を28年度に進める予定である。
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