研究課題/領域番号 |
15K00297
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
高木 理 群馬大学, 社会情報学部, 准教授 (30388011)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 様相論理 / 時系列データ / 頻度 / 検索システム / 医療データ / ナースコール |
研究実績の概要 |
時間経過に伴うイベントなどの事象の変化を表現可能な様相論理である“頻度論理”を,統計的検定の理論(t検定理論)に基づいて構築および改良を行ってきた.平成29年度の後半において,頻度論理に基づく時系列データ上の形式言語を開発し,さらに,その形式言語をjavaで実装することにより,時系列データの検索ツールを開発した. 頻度論理に基づく時系列データ検索ツールの有用性を評価するために,大規模な病院のナースコールの履歴データをナースコールシステムから抽出し、ナースコールの頻度(一定時間当たりの数)の変化に関する調査を行った。その結果、いくつかのナースコールの頻度傾向には、病棟間の差が大きいことが分かった。例えば、 (*)「夜中(AM0時~AM6時)から朝(AM6時~PM0時)にかけて、ナースコール数が上昇する」 というナースコール頻度の変化傾向について考える。一見すると、(*)は明らかに成り立つように見えるが、1週間毎日(*)が起こるかどうかという点で見ると、研究対象となった16病棟の内の6病棟で、どの週も毎日は起こらなかった一方で、87週中30の週で毎日(*)が起こった病棟が存在した。後者については、一か月間(*)が連続して起こった月も存在している。 また、病院全体におけるナースコール頻度の変化に関する現象について述べると、調査期間となった609日間の内で、2時間連続してナースコール数が上昇した日が11、3時間連続してナースコール数が上昇した日が1あったことが確かめられた。ナースコール数の上昇は、病棟内における看護師の対応業務が増加すること意味する。よって、3時間あるいは2時間、ナースコール数が連続して上昇することは、病棟内の業務が一時的に急増したことを示すものと考えられる。このような、ナースコールの頻度の傾向をつかむことは、ナースコールへの対応業務への準備や、必要な看護師の数を計算する上でも、重要になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,(i) 頻度論理の見直し,(ii) 頻度論理に基づく時系列データ検索ツールの開発,および(iii) 時系列データ検索ツールの実用性の評価,を遂行することを計画していた.また,上記(iii)の評価研究に際しては,(iii-1) ナースコール履歴データにおける特徴的な時系列データのケースファインディングと,(iii-2) 院内ネットワークシステム上のトラフィック等に関する時系列データのケースファインディングを計画していた. 上記の研究計画に対して,(i)~(iii-1)については概ね計画通りに研究を進めることが出来た.一方,(iii-2)については,データの収集を行うことはできたが,データの量が膨大な量となったためデータを整理して検索システムを適用するところまでは完了しなかった.そのため,一部の作業は未だやり残された段階ではあるが,研究計画の全体を考えると,概ね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,まず,「現在までの進捗状況」で述べた,(iii-2)の作業,つまり,頻度論理に基づく時系列データ検索ツールを用いた,院内ネットワークシステム上のトラフィック等に関する時系列データのケースファインディングを実施する.より具体的に述べると,院内ネットワークシステムをその用途に基づいていくつかのサブネットに分類し,トラフィックの時系列的な変化を,頻度論理を用いて特徴付ける.さらに,ネットワークが正常なときと異常なとき(ネットワークの障害や不正行為が発生したとき)とで,トラフィックの時系列的な変化のパターンに対して,どのような違いが起こるのかを分析する.また,無線LANデバイスのユーザの位置を,各無線LANデバイスと接続しているアクセスポイントとの電波強度に基づいて推定・予測する研究も行う.この研究についても,頻度論理ベースの時系列データ検索ツールを利用する予定である. 今年度の後半では,時系列データに関するフラクタルな現象,あるいはべき分布を,頻度論理に基づいて表現する研究を行う.この研究を通じて,時系列データに関するフラクタルな現象の度合いを数値化することを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の研究成果の発表時期が平成30年度の4月および5月の国際会議および研究集会におこなわれることになったため,その発表のための費用として平成30年度の使用額が生じることとなった.また,データの整備の一部が完了していないため,そのデータを整備するための費用も平成30年度の使用額に含めることにした.よって,平成30年度の使用額は,研究発表およびデータの整備のために用いる予定である.
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