本研究は,元々は2015年度~2017年度の3年間で実施することが計画されていた.実際,本研究の主な目標である,手術や薬剤投与などのイベントあるいは事象の発生頻度の変化を形式的に表現可能な言語と,その言語に基づいて指定された時系列データを抽出する時系列データのデータベースシステムに関しては,2017年度までの研究活動によって,そのプロトタイプの開発は概ね完了していた.しかしながら,プロトタイプシステムの実用性の評価と本研究の一連の成果発表を,十分な時間をかけて,さらには,科研費の予算を用いて実施することを希望していたため,研究期間を1年延長することとした. 2018年度では,まず,第31回回路とシステムワークショップにおいて,本研究成果,特に,頻度言語とその基盤論理である頻度論理に関する研究成果を報告した.報告に際して,頻度言語および頻度言語に基づく問合せ言語を実装した時系列データのデータベースシステム(のプロトタイプシステム)の有用性を評価するために,実際の医療現場におけるナースコールの発生回数に関する時系列データを用いた評価実験を行った. 2018年度の後半では,頻度論理の意味論である時空間区間階層モデルの拡張を行った.より正確に述べると,時空間区間階層モデルをラベルに持つ有限木に基づく意味論の拡張を行った.この意味論の拡張によって,頻度論理の表現力が大幅に強化された.例えば,ナースコールデータを分析する場合,従来の頻度論理ならば,各患者のスケジュールに関する時空間階層上の構造が共通していることが条件として必要だったが,この拡張された頻度論理ならば,各患者に対して個別に時空間区間階層モデルを構築することが出来るようになるため,スケジュールに関する時空間階層上の構造が異なる患者の集まりに対しても事象の発生頻度の変化を表現することが出来るようになった.
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