研究課題
最終年度である平成29年度は、前年度の成果であるKinoshita et al.(2017)における、依存型意味論(DTS)を用いた選択制限の意味論的前提(presupposition)としての分析を踏まえ、分析の対象を当初の研究計画に従ってコア-ション、メタファーといった現象に拡張する研究を行った。この研究成果を論文としてまとめ、Kinoshita et al.(2018)としてCoPo2017国際学会に投稿し、査読を経て採択されるに至った。CoPo国際学会においては共著者の木下・峯島両氏が口頭発表を行った。研究計画時の見通しは正しく、選択制限、コア-ション、メタファーのような認知意味論分野において形式意味論の枠組みにおける自然言語の意味の把握の限界を示すために取り上げられてきた言語現象を、DTSの枠組みの強みを生かすことによって、意味論的前提と前提適応(accommodation)、およびそれらのもたらす含みとして分析することに成功した。これによって、形式意味論の全体としての統合性と掌握範囲は大きく改善されたと考えられる。このような統一分析を提示するにあたっては、いくつかの技術的困難に直面した。最たるものはTransfer Frame (TF)というKinoshita et al.(2018)の分析の中核を為す概念の定義であった。この分析はCoPo2017国際ワークショップにおいて一定の評価を得ることができ、ワークショップ発表からのselected papersとしてジャーナルに雑誌論文として投稿中である(2018年4月現在査読中)。また、この研究から派生して、前提適応を意図的に引き起こす発話行為についての研究を行った。この成果はIto et al.(2017)として論文にまとめ、IASM2017国際ワークショップに投稿し、口頭発表を行った。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 図書 (3件)
Journal of Language Modelling
巻: Volume 5, No 2 ページ: pp.385-420
http://dx.doi.org/10.15398/jlm.v5i2.153
Proceedings of Workshop on Approaches to Coercion and Polysemy (CoPo 2017), University of Oslo, Norway.
巻: ー ページ: ー
Proceedings of Workshop on Logic and Algorithms in Computational Linguistics 2017 (LACompLing2017), Stockholm, Sweden.
巻: ー ページ: pp.141-159
Proceedings of Integrating Approaches to Social Meaning (IASM) workshop, in the 29th European Summer School in Logic, Language and Information (ESSLLI 2017), Toulouse, France.
第31回人工知能学会全国大会論文集, 2B3-OS-07a-4, ウインクあいち, 2017/5/23-26.