本研究の目的は、運転者の注意を解析することで、より適切に運転補助を行うシステムを開発することである。安全な運転を行うために、運転者は様々な運転環境に応じて、歩行者、信号、道路標識などへ、適切に注意を払う必要がある。本研究では、外向きの車載カメラ(車外カメラ)を通して運転環境を観測し、内向きの車載カメラ(車内カメラ)を通して運転者の視線方向を計測する。この車内カメラで計測された視線方向を車外カメラにマッピングすることにより、運転者の運転環境における注視点を決定する。さらに、その注視点の時間的な動きのパターンから、運転手が運転環境において、どのような物体にどの程度の注意を払っているのかを定量的に評価する。 具体的には、平成29年度には、以下の研究実績を上げた。(1)車の屋根に取り付けられた全天周カメラを用いて、運転環境の解析を行った。具体的な成果としては、車の屋根に取り付けられた全天周カメラの姿勢の自動推定を行い、さらに、その情報を利用して、車の走行の路面と車線の検出を行った。(2)運転者の視線方向をより精確に推定するための、眼球モデルの情報を利用して画像上で黒目の輪郭の出現位置と形状に拘束条件を付け加えた新しい手法を提案した。(3)車の内部の取り付けられた全天周カメラを用いて、運転者の視線を推定し、推定された視線情報で、対応の外部シーンの注視点を決定する方法を提案し、システムを構築し、評価を行った。(4)ディープラーニングを用いて顕著性マップを作成し、ヒトの注意の予測を行った。また、実際の視線との比較を行い、顕著性マップの妥当性の検証を行った。
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