研究課題/領域番号 |
15K00316
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
伊藤 一之 法政大学, 理工学部, 教授 (90346411)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 汎化 / 発見 / 学習 / 柔軟ロボット / 多脚ロボット |
研究実績の概要 |
生物は,数少ない経験から未知の多数の事象に適用可能な汎化された振る舞いを構成することができる.これは,高等生物だけではなく,小動物や昆虫などの下等生物にもみられる極めて優れた性質であり,従来の工学における「多数の事象から少数の抽象化された事象を抜き出す」という統計学的な枠組みでは説明が不可能な対照的な現象である. この生物の仕組みに注目し,本研究では,「汎化機能を実現しているものは,実世界に最初から存在している普遍的性質である」との仮説をたて,この「普遍的性質を発見し汎化を実現するためのプロセス」と,「学習により状態・行動空間を分化させ,振る舞いの精度を向上させてゆくプロセス」の2つのプロセスからなる新しい学習の枠組みを提案した. 28年度は,昨年度に開発したプロトタイプを用いて実験を行い,問題点を洗い出すとともに,その改良を行った.これにより,多脚ロボットの開発では,身体の柔軟性を利用することで,凹凸や曲面の存在する垂直な未知壁面を,環境の状態を計測することなく自律的に移動することを可能とした.また,柔軟マニピュレータの開発では,缶の中にある物体の判別をタスクとして学習を行い,「振る」という動作を改善していくことで,判別に適した振り方をマニピュレータが自律的に獲得可能であることを確認した.また,この結果を解析したところ,周波数特性をはじめとする実世界に存在する普遍的な性質を発見して利用することで,振り方の改善が行われていることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国際共同研究加速基金に採択されたことで,イギリスのブリストルロボティクス研究所との共同研究が可能となり,ブリストルロボティクス研究所が有するソフトロボットの技術を申請課題のロボットの開発に適用することが可能となった. 本申請課題は,力学的な性質をはじめとする,実世界に存在する普遍的な性質を用いて情報処理を行おうとするものであり,ロボットの身体の柔軟性は,それを実現する際に非常に重要な役割を果たす.この柔軟性をソフトロボットの技術を用いて実現することで,当初の計画に比べ,より申請課題に適したロボットの開発が可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
29年度は,国際共同研究で得られたソフトロボットの技術を積極的に活用し,全身がシリコンなどの柔軟な素材で構成されたロボットに提案手法を適用する予定である. また,最終年度となるため,これまでに得られたデータを整理し,提案した枠組みを精査,改良するとともに,様々なロボットおよびタスクに適応可能な一般的な枠組みとしてまとめ,国際会議,学術雑誌等に発表する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際共同研究加速基金に採択され、新たにソフトロボットの開発を行うこととなり,当初,申請課題で開発を予定していた一部のロボットを製作する必要がなくなったため,余剰金が生じた。 また,旅費についても,国際共同研究加速基金にてイギリスに滞在したため,本申請課題からの支出が必要とされなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は,当初の予定に比べ,国際共同研究としての成果がより多く期待されるため,繰越金は,成果発表ならびに,申請課題を遂行する上で必要な研究打ち合わせを行うための経費として使用する予定である。
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