研究課題/領域番号 |
15K00322
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
金田 重郎 同志社大学, 理工学部, 教授 (90298703)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ハザード検出 / プローブ自転車 / スマートフォンセンサ / 自転車方程式 / 曲率中心 / 自転車の傾き / ハンドル舵角 / 走行速度 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,ハザード検出アルゴリズムに大幅な見直しを行った.理由は,1)従来のハザード検出アルゴリズムがプローブ自転車という特殊な自転車を必要としたこと,2)汎用性を考えれば,スマートフォンセンサの活用が要求されるが,平成27年度の評価実験では,ハザードの判別性能が不十分との結果を得ていた.このため,平成28年度は,以下の2つのアプローチを併用した. ・プローブ自転車(車速やハンドル舵角を正確に測定可能)の信頼性改善(作り直し). ・スマートフォンセンサに適した検出アルゴリズムの追究. ここで,プローブ自転車は,質の高いデータを利用するケースとして位置づけ,その理想に,スマートフォンセンサが耐えるか否かが課題となる.その結果,プローブ自転車でも,スマートフォンセンサでも適用可能な,新しい特徴抽出法を考案・実現した.具体的には,(1)自転車の走行軌跡を求め,(2)走行軌跡の曲率中心を走行軌跡とともに,平面状にプロットする.本手法によれば自転車の運転者が,どこを目標として,自転車を操縦しているのかが直感的に理解できる.本手法については,既に特許出願を済ませており,今後は,ハザード検出アルゴリズムを,曲率中心法を併用して見直し,検出精度を上げてゆきたい. また,平成27年度から問題となっている,「ハザードの自動検出手法の確立には,実際に学生が危険個所を走行する必要がある.しかし,現実には危険が伴なうので難しい.」との課題については,自転車シミュレータを構築して対応するしかないと判断している.ただし,市販の,ハンドル軸を左右に傾けられないタイプの自転車シミュレータでは,到底,臨場感あふれる検証とはならない.このため,平成28年度は,車体を左右に傾かせることのできる自転車シミュレータの基本検討に着手した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に実施した,平安神宮から南禅寺周辺に至る道路のマップデータを利用したシミュレーションにより,当初の予定であった,アドホック無線LANによるハザード情報共有が,予想以上に効率が悪く非現実的であることが判明している.このため,本研究におけるハザード情報共有システムでは,ハザード情報サーバを設け,各自転車から道路状況をサーバに報告する構成とする. ハザードの自動検出と情報共有との最終的な研究対象は変わらないが,結果的に,当初の研究計画からは,多少変更となった.但し,スマートフォンセンサを用いて,プローブ自転車と同等の,高いハザード検出手法を確立することに,ターゲットを移しているが,実用性を担保する観点からはむしろ妥当と判断している.
|
今後の研究の推進方策 |
当初から,本研究における最終目的は,ハザード箇所の自動検出と,得られた情報を皆でシェアすることである.この目標は,最終年度平成29年も維持してゆく.平成28年に見出した,曲率中心法を用いた自転車操縦の「見える化」も,ハザード検出をスマートフォンセンサで実現するために,一つの突破口となると期待している.具体的には,平成29年度からは,ハザード情報共有システム・プロトタイプの開発に着手したい. 一方で,ハザード検出法を機械学習させるには,多数の学生に,危険な道路を走らせて,データを大量に集める必要がある.しかし,当初から予想されていたことであるが,それは難しい.このため,平成28年度から,自転車シミュレータの検討に着手している.市販の既存自動車シミュレータとは異なり,自転車自体の左右の傾きで操縦する等,高度機能を実現する必要がある.残された1年で,そこに見通しをつけたい.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度より自転車シミュレータの基本検討を開始したが,想像以上に技術的に困難であり,進捗が遅延した.その結果,当初スケジュールに比して,予算の利用ペースが遅れたことによる.
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度から本格化する自転車シミュレータの検討に充当する.
|