本研究は,自転車に取り付けたセンサーにより,道路の危険箇所(ハザード)を自動検出し,このハザード情報をライダー間で共有して,自転車の安全な走行を実現することを狙いとしている. 本助成の申請時点では,自転車間におけるアドホックな無線ネットワークを用いた,ハザード情報共有を目論んでいた.しかし,京都東山地区の地図データを用いたマルチエージェントシミュレーション(H27年実施)から,アドホックネットワークの効率性に大きな疑問を得た.このため,以後の研究は,自転車走行状態の可視化,自転車シミュレータ開発に重点を移した.以下に説明する. 自転車走行状態の可視化については,自転車走行軌跡の回転中心を,走行軌跡と同一の平面に写像する手法を提案した(H28年度).本手法を用いると,自転車走行の安定性を,直感的に読み取ることが可能となる.これらの成果は,平成29年度に学術的国際会議2件として発表した. 一方,ハザード自動検出手法の研究は初年度から引き続き行っているが,危険箇所を自動判定するための学習データの取得には,被験者が危険箇所を何度も走行する必要がある.結果的に,被験者に交通事故の危険が及ぶことになる.このため,研究室の中で,実際に被験者が運転して,3D合成された街の中を走行できる,自転車シミュレータ開発に,H28年度から着手した.本シミュレータの特徴は,自転車を傾けて,旋回できることであり,ハンドル舵角等の情報から,フィードバック制御により,ACサーボモータで傾斜を制御するアクチュエータである. 本シミュレータは,平成29年度末にシステムの最初のバージョンが完成し,被験者が乗車して走行性能の評価を行った.この結果,市販のホンダ社製自転車シミュレータに比べても,自然な走行特性が得られることを確認できた.本シミュレータの成果公表はH30年度から実施して行く.
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