本研究課題は、ネットワーク上の多くの人々の共同作業により、知識コンテンツを対話的に精錬する手法を明らかにすることを目的としている。これまで留学生の生活支援を目的としたアパートに関する知識コンテンツを題材として、知識コンテンツに誤りがあった時に簡単な質問応答を通してユーザから誤りを修正するための情報を取得する手法を提案した。そこでは、ゲーミフィケーションの考え方を導入するとともに、ユーザの信頼度を推測する手段として正解が既知の問題を導入した。今年度は、より一般的な場合を想定してシミュレーション実験を行い、知識コンテンツの修正が可能であること、また、ユーザの信頼度を推測することの有効性を確認した。また、ものの名前などが思い起こせないという失語のある方の喚語困難を支援する単語想起支援システムの知識ベースを対象として、その知識コンテンツを追加・修正するためのクイズ形式のゲームを開発した。これは、知識ベースとしてリンクトデータ(Linked Data)により表現されるものを想定し、リンクトデータの構成要素である三つ組(トリプル)のデータを取得するための穴埋め形式のクイズを出題するものである。データの追加の順序を制御するために、クイズの出題を深さ優先で行うものと幅優先で行うものとを導入するとともに、追加されたデータの正当性を確認するためのクイズを導入することで、追加するデータの質を担保する。チャットボットとWebアプリケーションとを組み合わせたプロトタイプを作成し、知識ベースへのデータ追加が可能であることを確認した。このようにネットワーク上でゲームの考え方を用いて人々の共同作業として知識コンテンツを追加・修正することが可能であることを示した。
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