平成28年度に取り組んだ,目的空間と探索空間との非対応性に関する検討を引き続き行った.さらに,この定義した非対応性指標の遺伝的演算へのフィードバックとして,対応領域に対する評価値推論への応用を試みた.評価値推論とは,探索個体の一部を実際に評価(実評価)し,残りの個体は,過去に実評価された個体の情報(データベース)を基に,推論された評価値(推論評価値)を用いて探索を進める手法である.これにより,評価値推論では,通常の探索と比べ,少ない実評価回数で探索を行えることが期待できる.評価値推論ではその性質上,非線形性が強い領域では評価値の推論が困難なことが予想されるため,非線形性の強い非対応領域では実評価を行い,線形性の強い対応領域では評価値推論を行うことが有効だと考えられる.この評価値推論法を実問題に適用し,少ない評価回数で高い性能(パレート解集合に対する精度,多様性の総合的な評価指標であるHyperVolume値(HV値)の向上)を確認した. また,Deep Searchに関する検討を推し進めた.可視化結果及び解析結果より,ユーザの求めるパレート解群を選択してもらい,それらのパレート解が持つ評価値ベクトルをReference Pointとした上で,原点とReference Pointとを結ぶReference Lineを形成し,進化計算手法による再探索を行う方法を提案し,進化計算学会や進化計算に関する国際会議において発表した.さらに,このDeep Searchにおける独創的な方法として,Reference Line の原点をユーザの嗜好に合わせて任意に移動させることで,追加探索において求める解の性質を決めることを可能とした.多目的実数ナップサック問題に提案した手法を適用し,その有効性を示した.
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