研究課題
心臓ペースメーカ細胞(洞房結節細胞)に異常が生じた場合の治療法として,人工的なペースメーカ(電子機器)を埋め込むのではなく,自分の(洞房結節細胞以外の)心筋細胞に遺伝子工学的操作を施すことにより,ペースメーカ機能(律動性)を生じさせ,それを用いて心臓を治療する「生物学的ペースメーカ工学」の研究が行われている.本研究では,生物学的ペースメーカ工学に資することを目的として,心臓心筋細胞の数理モデルを用いたシステム論的研究により,心室筋細胞などの非ペースメーカ細胞にどのように遺伝子操作を施せば,ペースメーカ機能が生じるかの詳細を明らかにすることを目指している.研究初年度である平成27年度においては,ヒト心室筋細胞の数理モデルを用いて,内向き整流カリウム電流I_K1 と過分極活性化電流I_fを変化させることでペースメーカ活動が発生することを確認した.さらに,心室筋細胞から創り出されたペースメーカ活動と洞房結節細胞のペースメーカ活動を定量的に比較し,心臓ペースメー カとしての妥当性を検討した.さらに,単一細胞だけではなく,2個の洞房結節細胞の結合系を用い,また,中心細胞と周辺細胞という洞房結節細胞の異種性も考慮して解析を行い,洞房結節のペースメーカ活動に及ぼすギャップ結合や細胞の異種性の影響を調べた.このことにより,生物学的ペースメーカ細胞が,結合細胞集団として適切なペースメーカ活動を行うための条件に関する有益な知見を得た.
2: おおむね順調に進展している
研究申請書の平成27年度計画に記述した項目「どのようなイオンチャネルコンダクタンス変化がペースメーカ活動を引き起こすか」の研究内容については,研究実績の概要に記述した通り,概ね達成したと言えるので.
当初計画通りの:・初年度では考慮しなかった遅い現象(イオンポンプやイオン交換体による遅いイオンの流れと細胞内外のイオン濃度変化など)を考慮したHH型モデルの解析を行う.
国際会議で発表を行ったが,開催地が比較的近隣の香港であったため,その出張旅費が当初予定より少ない額で済んだことに加えて,現有計算機の能力で何とか解析が実行できたので,新規計算機の購入が必要ではなくなり,次年度使用額が生じた.
必要に応じて,計算機を購入し,また,学会発表をより活発に行うことで,適切に使用する.
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
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