相反する競合作用と協調作用の両立は,効率的な進化計算のアルゴリズムをデザインするうえで重要な概念である Exploitation と Exploration のバランスの実現と関連している.このバランスは,大域的探索と局所的探索への探索リソース(個体数と世代数)の配分のバランスと考えることもできる. このことは,直観的には理解されうるが,これらの作用が内在するシステムの挙動は本質的に複雑であり,数理科学的にもさまざまなパターンを示すことが調べられている.本課題は,この数理科学的知見から,ブラックボックス関数最適化で有用な進化計算の探索過程をモデル化することを考えており,その第一歩として計画されている. 本課題はこのように本質的に理論研究であるが,進化計算などのアルゴリズム開発は工学的メリットを追求するものである.本課題では,数理モデルから進化型の計算手続きを導くことは達成したと考えている.その成果として,2019年度は,競合(反発)と協調(走化)をベースにした数理モデルに基づく進化計算の一実現法,具体的には分布推定アルゴリズムの実現についての論文をまとめを行ったが,進化計算の応用サイドから要求される工学的貢献と,本研究が主張する理論的貢献の祖語を整理することが課題として残った.
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