研究課題/領域番号 |
15K00346
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
中桐 斉之 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (30378244)
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研究分担者 |
向坂 幸雄 中村学園大学短期大学部, その他部局等, 講師 (90419250)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 分布拡大 / 格子確率モデル / 生息地破壊 / 生息地分断化 / 絶滅 |
研究実績の概要 |
生息地破壊と生息地分断化による絶滅等の問題は、環境保全にとって重要な課題となっている。近年、環境保全に加え、生息地の復元と生態系を構成する生物種の回復がより重要となってきており、生物多様性の観点からも注目を浴びてきている。本研究は、生息地の破壊が生物の分布拡大に及ぼす影響を解明するため、その空間パターンに着目して、生息地破壊の3つのモデルの構築とコンピュータシミュレーションの解析を行ってきている。 本研究では、今までに研究されたモデルを拡張し、より複雑ではあるが、実際の生物に即したもでるの開発を行っている。 また、連携研究者の榎原氏と、研究分担者の向坂氏とともに、寒天培地に障害物を設置して納豆菌や枯草菌の培養を行い、分布拡大を解析する実験を行っている。この実験により、寒天培地に障害物(破壊された生息地に相当)がある場合は、分布拡大の速度が遅くなるが、最終的な分布域には障害物が影響しないこと、また、分布拡大には栄養の流入が重要となったことが分かったため、生物の分布拡大においても、餌となる生物の供給が分布の拡大速度に依存する可能性が示唆される。また、今年度は、この寒天培地の厚さを変化させる実験を行い、培地の厚さが、分布速度や分布域に影響を与えるという結果を得た。 現在、これらの実験結果より、モデリングを行い、シミュレーションによる解析を行っている。 今年度は、三次元的なモデルに拡張してモデリング・シミュレーションを行った。 また、分布拡大の問題として、昨年度より、格子上繰り返しジレンマゲームにおける協調戦略の侵入についての解析を行っており、シミュレーションの結果、ノイズの割合が増加すると、協調戦略や非報復戦略が優勢になりうることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、現在までに研究されてきたモデルを拡張し、より複雑ではあるが、実際の生物に即したモデルの開発を行っている。現時点では、モデルのプロトタイプの構築が行われており、おおむね順調に進展している。 今年度は、寒天培地の厚さを変えた際に、納豆菌と枯草菌の培養を行い、分布拡大を解析する実験と、このモデル構築とシミュレーション解析も行った。モデリングとシミュレーションにおいては、従来の2次元のモデルから3次元のモデルへと拡張を行っているところである。実験からは、分布拡大において培地の厚さが関係している結果が得られており、そのシミュレーション解析を行っているところである。おおむね順調に進展している。 また、分布拡大の問題として、昨年度より、格子上繰り返しジレンマゲームにおける協調戦略の侵入についての解析を行っており、シミュレーションの結果、ノイズの割合が増加すると、協調戦略や非報復戦略が優勢になりうることがわかっており、また、フリーライダーが増加すると、逆に協調戦略が不利になり、報復戦略が優勢となることがわかった。 このように、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、寒天培地における、分布拡大の際に、培地の厚さを変えた際に、納豆菌の培養を行い、その分布拡大の速度や範囲が異なるという結果を得た。次年度は、このモデル構築とシミュレーション解析を行う予定である。その際、昨年度まで行っていた2次元のモデルと現在開発している3次元のモデルを比較してシミュレーション解析を行う予定である。 また、この分布拡大においては、栄養の流入が重要となったことが分かったため、生物の分布拡大においても、餌となる生物の供給が分布の拡大速度に影響する可能性があり、現在、分布拡大の測定法について研究していく。 また、これと並行して、囚人のジレンマゲームを用いて、戦略の分布拡大についての解析を続けていく予定である。これについては、自然界では必ずしも報復戦略が最適ではなく、特殊な協調行動をとる例が数多くあり、常に協調戦略を行う戦略をとる生物の分布拡大の可能性についての解析を行っている。具体的には、しっぺがえし戦略、パブロフ戦略、協調戦略、裏切り戦略の4つの戦略をとりうる格子確率モデルを考え、協調戦略をとっても勝者となりうる条件をシミュレーションによって解析していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
該当年度は、モデルの構築に重点を置いており、シミュレーション実験及び培養実験をする時期が期間後半にずれ込んだ。そのため、実験を行う時期を変更することにした。ゆえに、物品費およびシミュレーション実行のための賃金が必要となるため、その分を次年度の使用予定としている。また、成果発表も次年度に予定しているため、そのための旅費も必要であるため次年度使用額が生じることとなっている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、前年度と連携してシミュレーション実験および培養実験を行う予定であるためそのための費用として使用する。また、成果発表も予定しているため、そのための旅費に使用する予定ある。
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