研究課題/領域番号 |
15K00349
|
研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
鶴田 節夫 東京電機大学, システムデザイン工学部, 研究員 (00366395)
|
研究分担者 |
小橋 昌司 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (00332966)
八槇 博史 東京電機大学, システムデザイン工学部, 教授 (10322166)
櫻井 義尚 明治大学, 総合数理学部, 専任准教授 (30408653)
川辺 孝 東京電機大学, 情報環境学部, 教授 (40339081)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 遺伝的アルゴリズム / 進化型知能化方式 / 局所解法 / 学習方法・データ / 事例 / 最適化 / 多様性 / 予測精度 |
研究実績の概要 |
本研究課題の進化知能方式では、配送ルート最適化を目的にCBGA(CaseBased GenticAlgorith)を研究してきた。局所解法を統御する遺伝的アルゴリズムGAに事例(類似問題の優良解、前例)を融合して精度を上げるAI(人工知能)型の進化知能方式である。局所解法とはサポートベクターマシンSVM、ニューラルネットNN等の機械学習機や近似解法である。27年度は、配送ルート最適化に適用し、有用性を確認した。また、太陽フレア(黒点)による磁気嵐等の災害予測やひざ骨関節の識別等への適用しながら、この方式をCBGALO(CBGA integrating Local Optimizer)に汎用化した。28年度はGAのリスタート概念を新規導入したCBRSGALO (CBReStartGALO) を提案した。今回29年度はCBRSGALOの洗練化において、さらに効率的な最適化をはかるために学習方法(特徴パラメータ)によりフィットした学習データ(入力データ)をGAで進化論的に探索(選択)可能なCBRstrtGdsGALO (CBRestartGooddatasearchGALO) を提案した。 これらによる探索効率の向上の効果を主に医療・産業への応用で評価した。その研究成果を28年度に査読付の一流国際会議であるIEEEのSMC2016等でその理論・評価の論文4件、29年度にIEEEのSMC2017に論文2件を発表した。29年度秋からの研究成果はIEEEのSMC2018に1件、投稿した。配送ルート最適化に適用し、有用性を確認し国際会議などに発表してきた成果はIEEE Transaction等の一流国際ジャーナルに投稿するための最終的な推敲段階にある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
GAをリスタートするCBRSGALOに加え、SVM等の局所解法用の学習データをGAで進化論的に自動探索する方式を新規に開発した。当初計画のタブー、スキーマ、自律分散GAやそれらの単なる統合の顕著な凌駕が期待できる。災害予測や医工学等の複数対象に適用し、試行錯誤を重ねて理論を汎用化した結果と考える。 多様優良個体を初期個体としてGAをリスタートすると単なる機械学習と比べ最適化精度が2.8%向上、しない場合の2.4%と比べ15%以上精度が向上した。CBRSGALOの理論や評価結果はIEEEのSMC2016 等に発表した。H28後半には、パラメータを変えてGAのリスタート回数を増やし、多様かつ高評価値の個体の多い事例ベースを作り、多様かつ優良な個体を初期個体として選択しリスタートした。 ひざ骨識別では、単なる機械学習と比べ30%の最適化精度向上を得た。災害予測では、中規模のXフレアの場合、異なる問題に対してもSVMだけと比べ約25%(60%->85%)の大幅な最適化精度向上を得た。28年度には、これらをIEEEのSMC2017等に論文投稿し採択され学会講演を行った。29年度はGAを用いてより効率的な学習データを進化論的に探索するCBRsGcmbGALOを開発、中規模のXクラスの太陽フレアの予測実験を行い、前年度の85%弱から91.2%への更なる精度向上を達成した。これはIEEEの査読付一流国際会議SMC2018に論文投稿した。 配送ルート最適化でも、28年度は、提案方式の(特に前例保存)性能の優位性を検証した。29年度は研究環境の変化などによる進捗の一時的な停滞もあったが、成果をIEEE Transaction等の一流国際ジャーナルに投稿するための資料の整理や推敲をしてきた。
|
今後の研究の推進方策 |
29年度前半迄は局所機械学習機と事例ベースをリスタート型GAで融合するCBRSGALOを提案、29年度後半は更に学習用入力データをGAで自動探索するCBRsGcmbGALOを提案した。今後(30年度)は、過学習の問題の解決など、その更なる評価改良を進めるとともに、ひざ骨認識など医用応用へ適用範囲を広め、汎用化に向けた方式評価・改良を行う。目標は欧米発のディープラーニングの精度を凌ぐ“2045年のAI特異点”への貢献にある。 具体的に、【1】学習方法・戦略(特徴量)に合った学習用入力データの進化論的な自動探索・選択においては優良(実績・関連)データが少ない場合、識別範囲が狭くなる。この過学習の問題解決のためにテストデータなどの充実とその活用方法も含めた評価改良を行う。【2】ひざ骨認識など他の応用で多数の学習用画像データのセットとローカルな学習識別方式 (LDIC)をどう組合せば精度が向上するかCBRsGcmbGALOの汎用性の評価・改良を行う。【3】GA終了時に保存する優良個体の事例に、使用した初期個体や学習データの情報も含める。これらから初期解に使う事例(学習データを含む)のうち進化度合いの高い優良事例群を作成、この優良事例群をオンライン検索してGAリスタートを自動化し、識別精度向上を図る。【4】GA(リ)スタート時の初期個体のオンライン検索効率向上に向け、事例ベースの構造をオフライン学習する。つまり、事例ベースの永続性(GA内の個体と異なりGA終了後も保持)を利用し、当初研究計画の禁忌部分遺伝子列(タブー構造:類似個体やその部分・構造)や優良部分遺伝子列(スキーマ構造:評価値の良い遺伝子の要素の組合せ)の抽出をオフラインで行う。この遺伝子を学習データを含む事例に置き換えて上記【3】と融合する。【5】今年中に実現した範囲を、最終年度の成果としてまとめ、発表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度までで、教授職を退職した。共同で研究を行っている現職教授の研究室で研究を再開するにあたりコンピュータやそのシステムさらには人的資源の準備に 多大の時間・労力がかかったため国際学会発表や論文出版が予定よりは少なかった。これらのため、東京電機大学の研究者分141,837円に、兵庫県立大学と明治大学の研究分担者分を加えて、 239,008円を次年度に持ち越した。 この持ち越し分は実験用プログラムの作成などの人件費や、実験効率向上のための高性能コンピュータの部品などの購入・組立て費として、次年度に使う予定である。
|