研究課題/領域番号 |
15K00353
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
宮野 尚哉 立命館大学, 理工学部, 教授 (10312480)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カオス / 暗号 / 認証 / 暗号鍵交換 / カオス同期 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、平成27年4月に立命館大学に任用された長憲一郎助教、および、修士課程学生2名とともに研究を推進し、以下の研究成果を得た。連携研究者のアドバイスを受けて、量子鍵配送の共同研究先の探索している。 1.拡張Lorenz方程式が生成するカオス列を擬似乱数列として利用した使い捨てパッド型暗号システムの理論を確立し、ソフトウェア化した。当該研究室内で2台の計算機を用いて、暗号・復号実験を行い、理論通りの暗号通信が実行可能であることを確認した。カオス同期を利用した暗号文解読が不可能な通信周波数帯を同定し、この周波数帯で音声データが暗号化された。暗号通信実験では音声データが用いられたが、ASCIIコードあるいはSJISコードで表現された2進文字列に対しても暗号システムは有効である。研究成果を英文論文誌(IEEE TCAS I)および国際学会(NOLTA2015)で発表した。 2.秘密暗号鍵交換を、拡張Lorenz振動子または拡張Roessler振動子を利用して実行するためのアルゴリズムを発見した。この暗号鍵交換法は、従来の通信ネットワーク上で実行可能であり、セキュリティも十分に高いと推測される。研究成果を英文論文として投稿予定である。この手法は量子鍵配送の代替法となり得る。 3.カオス同期を利用した送信者認証のための理論を構築した。送信者のIDには、量子鍵配送で交換したビット列、あるいは、2で述べた手法によって交換したビット列の一部を用いる。研究成果を英文論文(IEEE TCAS II)に投稿し、査読結果を受けて、再投稿予定である。 4.拡張Lorenz方程式が生成する擬似乱数列の複雑さを統計的に検定した。NISTの基準に合格する複雑性が確認された。研究成果の一部を、英文論文(NOLTA, IEICE)として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究の計画時には想定していなかった新しい研究成果、即ち、カオス同期を利用した暗号鍵交換法を発見し、ソフトウェア化を実現することができた。また、当該研究室内において、暗号通信の計算機実験を行うことができるようになったことも大きな進捗である。平成28年4月までに得られた研究成果を基に、平成28年度は5報の英文論文を投稿する予定である。これらの理由により、「当初の計画以上に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究成果を英文論文として研究発表して外部評価を受けることが重要である。量子鍵配送の代替手段としてのカオス同期による暗号鍵交換方法は、短い通信文が対象ならば、これまでにない新しい暗号通信方法としても適用可能であると考えられる。これは研究計画当初に想定していなかった発見であり、今後、その妥当性を検証する方針である。 拡張Lorenz方程式に基づく使い捨てパッド方式による暗号システムでは、暗号鍵交換を量子鍵配送によって実行することを想定しているが、当該研究機関では量子鍵配送を利用することができないので、共同研究機関を見つけることが重要である。共同研究機関の探索は平成28年度の重要課題の一つであり、連携研究者からのアドバイスを得て、探索を進める予定である。
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