研究課題/領域番号 |
15K00358
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
三河 正彦 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (40361357)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 移動ロボット / 半自律 / 遠隔制御 / 地域情報 / 情報提供 / 積雪寒冷地 / インタラクション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,オぺレータ(人間)が遠隔操作する移動ロボットを用い,積雪環境において観光客や地元住民に対して積極的に地域情報を提供するロボットシステムを構築することである.積雪環境下では,立て看板等は雪に埋没しがちで,また積雪状況も日々変化する.そこで,我々が研究開発する地域情報ディジタルアーカイブと移動ロボットを活用することにより,常に変化する積雪環境下で柔軟に行動し,観光客や地域住民と積極的にコミュニケーションしつつ有用な情報を提供可能なシステムを構築し,地域の活性化を目指す.本研究は,中部大学と北海道稚内市の稚内北星学園大学の共同研究チームを組織し,稚内駅前から駅前商店街,公共施設等で評価実験を行う. 本研究課題二年目であるH28年度は,H27年度に試作したクローラ型移動機構を有する移動ロボットを用い,その基本機能の実装,改良,評価実験を行った.具体的には,ゲームパッドと広角カメラを利用しネットワークを介した移動ロボットの遠隔制御機能の改良と基礎実験,LRF(レーザレンジファインダ)による地図作成と現在位置推定機能(SLAM)による無積雪期の走行実験,タブレット端末を利用したCG(コンピュータグラフィックス)で表現した顔インタフェイスの改良,数理AIMモデルを利用した知覚情報並列処理のタスク制御による省電力化手法の改良,複数の広角カメラを利用した遠隔制御のための水平360度自由視野画像生成手法の改良等を行った.他に,利用者に優しいロボットの外見を実現するため雪だるま型外装のデザインと柔らかい素材による試作を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無積雪期の2016年9月には,北海道稚内市駅前商店街において,LRFに基づくSLAMにより,移動ロボットの活動範囲となるメインストリート片道約250[m](一周約500[m])の地図作成および自己位置推定が行えることを確認した.積雪期の2017年3月には,走行実験は行えなかったが,稚内の多数の古写真をコンテンツとして情報提供サービスの実験を行い,ロボットの使用/不使用による人々の行動や印象の違いを調査した.また稚内市の歴史データであるコンテンツ(古写真)へのメタデータ付与のための基礎データ実現も併せて収集した.移動ロボットを安全かつ容易に遠隔操作するための,そのオペレータ(人間)のためのインタフェイスとなる水平360度自由視野の実現および遠隔制御への応用を行った.2016年と2017年に実施した稚内市内の走行実験を通して,ロボット周囲の人々にとって優しい外見と行動が必要であることが分かった.そこで,柔らかい素材を用いたロボット外装のデザインと試作,歩行者とロボットのすれ違い時に人に優しい印象与える走行制御手法の提案を行った.しかしながら,厳冬期の現場実験,各要素技術の更なる性能向上,また要素技術の情報提供ロボットシステムとして統合等,まだ多くの課題がある.後述する研究業績以外にも,すれ違い時の走行制御については査読付国際会議に原稿提出済みで,現在査読結果待ちである.
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で述べたように,SLAMの精度向上や水平360度自由視野の画像合成精度向上および厳冬期の走行実験,360度水平自由視野と走行制御,遠隔制御の統合による半自律遠隔操作システムの実現,情報提供コンテンツを利用したロボットの印象評価等を行う予定である.また人に対するロボットの印象向上のために,人の顔と名前を憶える機能も提案しており,2017年度に機能を実現させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度の当初の計画では,クローラ型移動ロボットをもう一台試作する予定であったが,提案手法の確認に,本研究課題開始前から所有する車輪型移動ロボットを使用することも多く,2016年度に試作は行わなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
移動ロボットの外界センサとして,レーザレンジファインダ(LRF)が重要であり,現有設備(長距離LRF 1台,短距離LRF 2台)では足りないため,長距離LRFを追加購入する予定である.
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