これまでにアオリ光学系を用いた距離推定方式について,車載用途で利用しやすいシステムとして確立することを目的とし,研究を進めてきた.特に,車両の全周囲にわたって距離推定を行うことで,事故予防運転や自動運転等に活用できるよう,本方式の改良や工夫を行ってきた.その中でもメインとなる研究対象は距離推定範囲の広範囲化である.一般に,車両全周囲にわたって距離を監視する際,撮影装置の配置台数を抑制するため,また各装置間の連携を図りやすくするために,さらなる広範囲化を追求した.ただし,広範囲化の際に,対象となる個々の物体の画像解像度の低下や光学系に起因する画像歪によって,どうしても鮮鋭度の推定誤差が大きくなり,距離推定精度が劣化する.特に,レンズ外周においてその影響が大きく,アオリ光学系を採用する本方式において解決すべき課題であった. そこで,ニューラルネットワークの導入によりレンズ歪の影響を低減する手法を開発した.この方式による距離推定精度の頑健化・高精度化をさらに進めるために,ニューラルネットワークの構造の改良を図った.前年では,画像座標に依存する歪の影響を吸収するようなネットワーク構造とするため,y座標および鮮鋭度を入力値としたが,今回はさらに鮮鋭度算出にもニューラルネットワークを採用した.これにより,精度がさらに向上した.この成果は,国際会議International Workshop on Advanced Image Technology and International Forum on Medical Imaging in Asia(IWAIT-IFMIA)2019で発表し,非常に高い評価を得た.
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