研究課題/領域番号 |
15K00366
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石井 裕之 早稲田大学, 理工学術院総合研究所(理工学研究所), 准教授(任期付) (10398927)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ロボット / インタラクション / 遊び / 動物実験 |
研究実績の概要 |
本研究では,人間-ロボット間のインタラクションの基礎モデルとして,ラットと小型移動ロボットによるインタラクション実験を実施し,それを解析することで遊びに関する基礎理論を構築することを目的としている. 2016年度は,新たに実験フィールドの床面上での平面移動と,壁面上での垂直移動の両方を行うことが可能な小型移動ロボットの開発を行った.ここでは,磁力によって壁面を吸着し,車輪によって壁面上を移動可能なロボットを開発した.またこのロボットには,ラットの立ち上がりを模倣する能力も持たせた. また開発したロボットを用いて,ラットとのインタラクション実験を行った.実験ではロボットからラットに対して積極的な働きかけを行い,それによって両者の間に遊び的なインタラクションを発現させることを試みた.実験には,社会性が高く行動実験に適しているとされるLong Evansラットを用いた. 実験の結果,ロボットからの働きかけにより,ラットからロボットへの接近行動の増加がみられた.これは,ロボットからの働きかけがラットのロボットに対する興味を喚起したためと考えられる.これより,ラットからロボットへの接近行動は,複数のラット間のインタラクションの1種であるFollowingに類似する遊び的インタラクションであると考えられる. 今後はロボットの一層の改良を進め,加えてインタラクション実験の実施と解析を進め,動物の遊びに関する基礎理論の構築を進めていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大型の飼育ケージ内における2匹のラットのインタラクションの形態について調査をしたところ,共に飼育ケージの壁を登るなど,従来考えていた以上にラットは,多様な動きをすることが確認された.そこで,ラット-ロボット間にも同様のインタラクションを作りだすために,床面上の水平移動と壁面上の垂直移動の両方が可能な小型移動ロボットを開発した.これにより,ラット-ロボット間のインタラクションのレパートリーが広がり,より多様なインタラクションが可能となると期待される. ラットとロボットによるインタラクション実験では,両社の間に遊び的なインタラクションを作りだすことに成功しており,今後,より深く解析を進めることで,遊びの基礎理論の構築につながることが期待される.また,ラットの遊びを評価する手法として,画像処理によるロボットへの接近行動の頻度と活動性の計測,ならびに音響解析による超音波発声の頻度の計測が有用であることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
開発したロボットは,床面から壁面への移動に失敗する場合があり,その際は,一旦壁面から離れて床面で姿勢を調整した上で再度,壁面に向けて接近する必要がある.そこで,床面から壁面への移動の成功率を高めるために,駆動系の改良を行う. 続いて改良したロボットを用いて,ラットがロボットと共に壁を登る場面を作りだすことを試みる.ラットの壁のぼりには,リーダーとフォロワーが存在するため,まずはロボットがフォロワーとなり,その関係が定着した段階で,今度はロボットがリーダーとなることを試みる. また床面上のインタラクションでは,ロボットからラットへのインタラクションをさまざまに変化させて,ラットの快情動を高め,ラット同士の遊び時に見られる超音波発声を発現させることを試みる.例えば,ロボットがラットに適度な接触を行ったり,ラットの立ち上がりにあわせて立ち上がりを行ったりすることを考えている.ここでは,ロボットの行動パラメータをさまざまなに変化させ,行動パラメータとラットの快情動の関係についても調査する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年4月に,新たにPI資格を取得し,研究室を開設した.その際,研究室整備の一環として各種実験装置の提供を受けたため,当初計画していた実験装置の購入が不要となった.そこで,最終年度として多くの予算が必要と見込まれる2017年度に,それらの研究費を繰り越すこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
ロボットの一層の改良を進める.また,暗所でのラットの撮影が可能なサーモカメラを購入する.
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