研究課題/領域番号 |
15K00372
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
永井 岳大 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (40549036)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 質感認知 / 色覚 / 色恒常性 / 心理物理学 |
研究実績の概要 |
本研究では、質感的な画像情報、特にその中でも光沢ハイライトに着目し、その質感的画像情報と色知覚の関連性を明らかにするための心理物理実験を行っている。具体的には、光沢ハイライトが照明色そのものを反映する場合が多いことから、それがヒトの色恒常性の手がかりとして実際に有用かどうかを検討している。27年度までの実験結果から、光沢ハイライトが物体上に存在する場合と存在しない場合を比較すると、光沢ハイライトが存在する場合のほうが色恒常性が大きいことがわかっていた。そこで28年度では、そのメカニズムを明らかにしていくため、光沢ハイライトを付与することによって生じる2種類の変化、すなわち光沢感知覚変化と色・輝度画像統計量変化のうち、どちらが光沢ハイライトによる色恒常性増強へ寄与しているのかを検討した。具体的には、光沢ハイライトを有する物体の画像(光沢画像)に対し、画像統計量を維持したまま光沢感を喪失させる画像処理を施した画像(ランダム画像)を作成し、光沢画像とランダム画像における色恒常性の強さを比較した。その結果、光沢画像でもランダム画像でも、光沢ハイライトがないマット画像よりは色恒常性が強かった一方で、光沢画像の方がランダム画像よりも色恒常性が有意に強かった。これらの結果から、光沢ハイライトによる色恒常性への寄与として、輝度・色画像統計量に基づく低次要因の影響と、光沢の認知という高次要因の影響の両方が存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、光沢ハイライトという質感的画像情報が色知覚へ与える影響が存在することを明らかにでき、さらにそのメカニズム解明へ踏み込んだ実験・解析を始めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、光沢ハイライトが色恒常性に寄与することと、その要因として色・輝度統計量などの低次要因と光沢感認知などの高次要因の2種類が存在することが明らかとなった。しかし、それらの低次要因と高次要因が定量的にどの程度色恒常性に寄与しているかはまだ検討していない。また、個人差がやや大きく、被験者によっては必ずしも光沢ハイライトが色恒常性へ寄与しない場合もあった。これらを踏まえ、今後は被験者数を増やしデータの安定性を向上させるとともに、光沢感や画像統計量の影響量が色恒常性へ与える影響について、実験条件数を増やした上で心理物理実験により定量化することにより、数理モデル化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
高輝度ディスプレイの導入を予定していたが、27年度と同じLCDモニタを用いた条件下で実験を続けており、高輝度ディスプレイを使わずに研究が進んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
これまで得られた結果が、さらに高輝度な光沢の場合にどのような影響を及ぼすか検討するために、高輝度ディスプレイを導入する。また成果発表として、国際会議の発表と論文発表費用として使用する。
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