今日,技術力やコスト競争力だけで製品の差別化が実現しにくくなる反面,小型化やデジタル化などによって製品形状やインタフェースの自由度が高まってきており,多種多様な製品が競合した状況にあると言える.このような中で,ユーザの期待を満たすだけでなく,期待を超えるような魅力的な製品を設計するためには,製品に対するユーザの感性やユーザビリティなどの直接的な評価過程と併せて,製品に対する期待や,製品に関する経験の記憶など製品体験に関わる一連の認知過程を考慮に入れる必要がある.本研究課題では,ユーザの製品に対する一連の認知情報処理過程を主観,行動,生理指標により認知神経科学的観点から精査した.製品に関わるユーザの期待とその後の感情反応を説明する新たな認知モデルを構築し,本モデルに基づき期待の形成,美的感性評価に関わる実験的検証を行った.行動実験および脳波計測実験により,期待の生成・維持,美的感性に関する情報処理過程の要因分析を行い,製品に対するユーザの認知的評価構造を明らかにした.また,製品評価の潜在的・無意識的情報処理を検討するための定量的感性評価法として,脳波計測法を用いた新たな評価手法を構築した.本研究課題により,製品評価に関わる一連の顕在的・潜在的認知情報処理過程を明らかにし,新たな設計理論,手法の構築への道筋をつけることができた.本研究課題で得られた成果は国際会議,学術雑誌において発表を行った.
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