研究課題/領域番号 |
15K00375
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研究機関 | 日本文理大学 |
研究代表者 |
北岡 哲子 日本文理大学, 工学部, 特任教授 (30447536)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 癒し工学 / 癒し刺激 / 表情評価法 / 器械学習 / C-Face / C-face D. / 認知症 / 表情診断 |
研究実績の概要 |
虚しさや孤独を抱え,空洞化している心の状態を放置しておくと,いじめ,キレる,反社会的行為や自殺などの問題行動として社会に表出する恐れがある.「癒し」を工学や心理学,医学などを用いて分析生成し,癒されることが必要な人々に提供することが可能になれば,より安全安心な社会を構築できる.「癒し」を社会のために有効に活用する「癒し工学を提唱し,その実現のために癒し工学研究を進めてきた。3) まず,心理学と工学(心理的実験と工学的解析)との両方を用いた癒し工学の基本形を紹介する.美しい顔をみて癒された人は,その顔の情報が脳に入力され癒されたと感じ,その思いが表情や言葉などの表出行動として第3者が観察可能な身体の外に出る.癒しであるその美しい顔(因子)の物理量と癒された人の癒され度合(言葉での表現や表情の変化など)との関係を解明する.これが,どんな物理量をもったどの因子に癒されるのか明らかにできたなら,次はその因子をもった癒しを工学的に生成し,その人が必要なときに呈示し,最適な癒しで心の充足を促すことができる.この効果を社会全体に波及させれば,自分で解決できない心の虚しさによりおこる問題行動を抑制する一助になりえるに違いない そしてこの基本形に医学や脳科学を融合させ,いろいろな方向に展開している.たとえば,癒される表情と癒され度合の分析結果をもとに北岡式表情分析評価法:C-Faceを考案した.臨床医は,患者の表情から疾病の存在を経験的,主観的に感じとることが多いが,客観的な表情評価法は渉猟する限りみあたらない。C-Faceは注目すべき顔の特徴を求めて,その変化から疾病の有無や重症度を客観的に予測する可能性をもつスケールである.表情を数値化した定量的な表情評価方法であが、これを,認知症,鬱,パーキンソン,頭痛などの疾病に適用し、C-Face D.も開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2012-2015年度の基礎研究Cにおいては、表情解析による診断法の研究を行い、北岡式顔表情評価法(C-Face)という表情を観察しスコア化する定量的スケールを 考案した。加齢や疾病、感情の落ち込みが原因となる事故や事件が多発している現代において、顔画像から自動的に心身の疾病の有無と症状のレベルをスクリーニングできるシステムを社会に普及させられれば、早期対処・治療が可能となり、社会により安全で安心な環境を提供でき、ひいては社会的コスト削減にもつながる。そこで、まず、世界的に増加傾向にあり、特に高齢化社会の日本において激しい増加率である認知症にスポットをあてる。 認知症は発症していることに気づかず生活している高齢者が数多くいるという問題があるため、早期発見が求められる一方,医師による診断でしか認知症を発見できないことが課題である.認知症の簡易スクリーニングは社会的な要請が非常に大きい.そこで,顔画像のみを用いた認知症 の簡易スクリーニングシステムの開発を行った.まず,既存の顔データセットから表情の表出が顕著であると判 断されたデータに対して,臨床的顔表情評価法(C-Face: Clinical Facial Expression Scale)に基づき,C-Faceの評価を 行うと同時に,顔器官点を手動抽出し,学習用および評価用サンプルを生成した.これらのデータセットに基づ き深層学習を用いて,顔画像からC-Faceを推定するシステムを作成した.作成したシステムでは顔画像を撮影しながら実時間により,C-Faceを推定することができる.また,C-Faceから簡易的に認知症のリスクも提示することが可能となった.その知見を用いて関連研究で,認知症の簡易な診断が可能な C-Face.D を参考に,工学的なアプローチで自動診断する手法を提案した, CFace.D のスコアを出力するニューラルネット を構築することで,認知症リスクの推定を実現した、
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今後の研究の推進方策 |
本システムは被験者にテストのようなものを行う必要がなく顔画像を撮影するだけで,非常に勘弁に行え ることも改めて確認できた.このため,精度は十分ではないものの,例えば,毎日測定を行い,その変化を観察することにより,スクリーニングが行える可能性も示唆されたが,実際の臨床データの収集および評価が不十分であるため,より多くの臨床データを確保することが課題である. 他にHeterogeneous Learning を用いて顔 器官点を同時に学習することでスコア推定精度が向 上し,更新回数を重ねることにより顔器官点の検出精度が向上した.合計 スコアを教師ラベルに追加し重みづけによる各観察項目のスコア修正などが挙げられる.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定のPCの入荷が大幅に遅れそれらを用いておこなう被験者実験行えなかった。そおため予定していた謝金の支出もなかったし、その後の展開もなく、全体的に使用する機会がなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の細目予算に加え、昨年度不可能だった被験者実験や学会等への発表活動その他に使用していきたい。
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備考 |
癒し工学は社会に貢献するための研究なので、研究者のみならず、一般的な人々へ広く浸透することが、研究をすすめるための方策につながる。そのため社会的認知活動に重みをおいている。 電気新聞という日刊紙に「癒し工学の散歩道」というコラム連載を開始した。 これまでの日経オンラインのコラム、大学ジャーナルという教育誌のコラム連載と合わせ、こん年度も新たな連載予定をいただいている。
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