研究課題/領域番号 |
15K00376
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
為末 隆弘 山口大学, 大学情報機構, 准教授 (00390451)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スピーチセキュリティ / サウンドマスキング / 心理評価 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,大掛かりな遮音・防音工事を必要とせずに現状のままのオープンスペースにおいて,空間内の限られた範囲に音波を放射できるパラメトリックアレイスピーカによりマスキング音を提示し,会話音声をマスクするサウンドマスキングシステムを構築しようとするものである.パラメトリックアレイスピーカの鋭い指向性を活かし,音声やマスキング音の様々な到来方向といった複雑な空間音響条件を考慮した上で,スピーチプライバシーの中でも,特に情報漏洩の防止や個人情報の保護に関連するスピーチセキュリティをコントロールする.
今年度は,スピーチプライバシー・セキュリティを保護するための最適な物理指標を見出すための心理実験を行った.具体的には,会話妨害レベル,信号対妨害雑音比,明瞭度指数,音声明瞭度指数,スペクトル距離などの従来の明瞭度・了解度予測に関する様々な物理指標を導入し,これらとスピーチプライバシー・セキュリティに関するカテゴリ順序尺度との関連性について考察した.また,従来の物理指標に関して,周波数帯域や重みの計算方法について検討し,スピーチプラーバシー・セキュリティに関する心理評価と対応の良い物理指標を選定した.上記の結果を踏まえて,マスキング音発生器や背景騒音測定器を組み合わせて全体としてのサウンドマスキングシステムを試作した.このシステムでは,スピーチプライバシ・セキュリティのレベルを予め設定し,音声に応じてマスキング用雑音を提示できるものとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目的は,「スピーチプライバシー・セキュリティを保護するための最適な物理指標を見出すこと」であったが,従来の明瞭度・了解度予測に関する様々な物理指標(会話妨害レベル,信号対妨害雑音比,明瞭度指数,音声明瞭度指数,スペクトル距離など)の物理指標を導入するのみでなく,周波数帯域や重みの計算方法を種々変化させた場合について検討し,スピーチプライバシー・セキュリティに関する心理評価と対応の良い物理指標を選定することができた.さらに,上記の最適な指標を用いて,マスキング音発生器や背景騒音測定器を組み合わせて全体としてのサウンドマスキングシステムを試作することができた.このシステムにより,予め設定したスピーチプライバシー・セキュリティのレベルの要求を満たすために,音声に応じてマスキング用雑音を提示できるようになった.
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今後の研究の推進方策 |
「複雑な空間音響条件でのスピーチプライバシー・セキュリティの調査」 心理実験をもとに,指向性・超指向性スピーカにより様々な到来方向からマスキング音を放射した場合の音声とマスキング音の到来方向とスピーチプライバシー・セキュリティに関する心理評価の関係を調査する. (1) 種々のスピーチプライバシー・セキュリティレベルに対応できるよう指向性・超指向性スピーカを試作する. (2) どのような音声とマスキング音の到来方向であれば,どのようなスピーチプライバシー・セキュリティ評価となるかを調査する心理実験の計画を立案する. (3) 音声とマスキング音を複数のスピーカ・アンプ装置を用いて提示し,音声のマスキングに関する実験を行う.具体的には,音声とマスキング音の到来方向と音圧レベル値を様々に変化させ,音声に対してどのようなスピーチプライバシー・セキュリティ評価に相当するかを判断する. (4)音声とマスキング用雑音の到来方向の違いがスピーチプライバシー・セキュリティに関する心理評価に及ぼす影響を考慮し,主観的当価値によるスピーチプラーバシー・セキュリティに関する心理評価の予測問題について考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
雑誌論文の投稿及び国際学会の発表について次年度への実施に変更したため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の雑誌論文への投稿料及び国際会議発表への参加費,英文校正費として使用する.
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