研究課題/領域番号 |
15K00378
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
川野 道宏 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 准教授 (00404905)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自己主体感 / 自己決定感 / 自己効力感 / 内的動機づけ / リハビリテーション / 日常生活動作改善状況 |
研究実績の概要 |
自主的な訓練意欲(内的動機づけ)がリハビリテーション効果に与える影響を検討する際,意欲に関わる要素を分解して解析することは、意欲という心的現象を多面的に捉えることができるため,より客観的に分析できる可能性がある.そこで,意欲と関連があると想定される自己効力感,自己決定感,自己主体感という3つの主観に着目し患者からのアンケート結果と日常生活動作の改善状況との関係を分析した.多くの場合,リハビリテーションを必要とする患者は,意欲やこれら主観の生起に関連する脳部位の損傷や,思い通りに体を動かすことができない負の体験など,これらを減弱させられる要因が多く存在し,リハビリテーションの効果にネガティブな影響を受けていることが考えられる.実際に意欲を測る「やる気スコア」にて脳血管疾患にてリハビリテーションを行う対象者50名の得点を調査したところ,意欲低下ありのカテゴリーに分類された方は約6割強存在した.さらに対象患者の自己決定感・主体感・自己効力感と意欲、日常生活動作改善状況(FIM得点)との関連を分析したところ,「意欲」と「FIM得点改善率(入院1か月時点)」との間には正の相関(r = 0.57, p<0.05)が示され,さらに「自己主体感」と「意欲」の間には強い正の相関(r = 0.54 , p<0.01)が認められた.また,「自己主体感」と「自己決定感」との間にもr = 0.49, p<0.01と有意な相関が認められた.「意欲」は社会的報酬(褒められる等)と関連し,先行研究によって社会的報酬はリハビリテーション効果の1側面である運動学習効果に良い影響を与えることが実験的に確かめられている.本研究では,実際の臨床現場でリハビリテーション治療を受ける脳血管疾患患者においても意欲とリハビリテーション効果のポジティブな関連性があること,さらに意欲と自己主体感において相関があることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度の予備調査により得られた「リハビリテーション意欲を維持するためのキーワード」である「自己主体感」「自己効力感」と「意欲(内的動機づけ)」との関連を検討するため,さらに,近年の研究において「自己決定感」と運動学習効果との正の相関が示唆されていることから,実際の臨床現場にてリハビリテーションを受ける患者の「自己決定感」の程度と「意欲(内的動機づけ)」の関係,および日常生活動作改善状況に与える影響も合わせて検討するために先行研究をもとに自記式調査用紙を作成し,脳血管疾患にてリハビリテーションを行う対象者にアンケートを実施した.結果,「自己決定感」と「自己主体感」,さらに「自己主体感」と「意欲」との間の相関関係が示され,実際の臨床現場においてもこれらの主観と意欲との関連,日常生活動作改善状況との正の相関関係が成り立つ可能性が示唆された.次年度は,臨床調査研究で得られた結果の因果関係を脳機能画像解析法を用いて分析する.高磁場環境にて運動課題を視覚提示できるBOLD screen for fMRI (Cambridge Research System社)を使用し,「自己主体感」や「自己決定感」と運動学習効果との関連についてより精度を高めた解析条件を設定し,実験を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
臨床のアンケート研究により今回,「自己決定感」と「自己主体感」,さらに「自己主体感」と「意欲」,「意欲」と「日常生活動作状況」との間に正の相関関係が示されたが,今後さらに詳しく分析していくために,これらの因果関係やADL回復状況への影響度を検討していくことが必要である.そのために,「自己決定感」および「自己主体感」に焦点を当てて,それら主観が強く想起されている時とそうでない時の運動学習効果を,認知心理学的手法とfMIR計測法の組み合わせを用いて検討していく予定である.具体的には,「自己主体感」や「自己決定感」に関する脳部位の活動と運動学習効果との関連を検討するために,健康成人20名程度に対してfMRIを用いた脳機能画像解析を進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,平成29年度に計画していた実験研究の実施が,使用機器の故障等により平成30年度へと持ち越されたため,それに伴う備品費,消耗品費,被験者への報償費の使用が次年度に移動した
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