医療者からの声掛け(社会的報酬)とリハビリテーション訓練を受ける患者の訓練意欲(内的動機づけ)との関連を検討していく中で,「自己主体感」「自己決定感」「自己効力感」の意欲への影響を検討した.臨床患者50名への調査により,「自己主体感」「自己決定感」が意欲に影響を与えることを見出し,さらに意欲とリハビリテーション訓練効果の1つである日常生活動作改善状況(FIM得点)との関係を明らかにした.次に,当初の計画に挙げた「評価者のどのような関わりが意欲を引き出す社会的報酬となりえるか」の問いの検討として,自己主体感を高める医療者の関わりについての調査研究を実施した.その結果,医療者の関わりとして「治療に対する適切な説明」と「行為主体を患者に帰属させる関わり」の2因子が抽出された.続いて,これらの関わりが自己主体感を介して意欲に影響を与えるというモデルを立てて検証した結果,「行為主体を患者に帰属させる関わり」から自己主体感への影響,自己主体感から意欲への影響が確認された.これにより,「どのようにしたいか聞いてくれ,結果についてこうだったねと説明してくれる」等の行為主体を対象者に帰属させる関わりを社会的報酬刺激として実験研究に取り入れ,調査研究で得られた結果の因果関係を脳機能画像解析法を用いて分析する準備を進めた.高磁場環境にて運動課題を視覚提示できるBOLD screen for fMRIを使用し,被験者の「自己主体感」に働きかける独立変数の検討のため予備実験を行った.その結果,いくつかの運動学習課題から被験者に1つを選択してもらうこと,課題実施後には適切な評価を評価者の映像によりフィードバックすることを独立変数として設定することに決定した.今後,他の実験条件をさらに検討し,運動学習効果との関連についてより精度を高めた解析方法を作成して実験を進める予定である.
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