研究課題
従来の音楽聴取に関する認知科学的研究では、国内外を問わず、楽音や単純な音列に対する知覚や注意、記憶といったような基礎分野で、その認知過程に関する基本的メカニズムが研究されてきた。 音や音楽といった聴覚情報が人間の情動に影響を与えていることは経験的に知られており、基本的には視覚優位である人間の情報処理過程において、我々が感得するそうした感覚は、聴覚と視覚の相互作用によって達成されていると考え、本研究では“心地よさ ”という研究上の基本軸を設定して「潜在記憶」、「視聴覚の相互作用」、および「計算モデルの構築」という異なる3側面から音楽聴取に対する包括的なアプローチを行ってきた。平成29 年度は、過去2 年間に得られたデータに基づいて、潜在記憶と、視聴覚の相互作用観点から、“心地よさ”の感性情報処理過程に関する妥当性の高い理論を構築することを目的としていた。このために、計算論的モデルを構築し、コンピュータ上に実装して実際にシミュレートすることで、理論の妥当性を客観的に吟味すると同時に、人間の音楽認知過程を帰納的に推測できるということも期待された。以上の前提に基づき、 実際に「メトリカルユニット階層化モデル」を中核とするモデルを構築した。このモデルは、人間の知覚する拍の82%、拍子の85%を予測できる精度をもつ計算論的モデルであり、ここに情動喚起に関するパラメータとして「暗意-実現モデル」の考え方を取り入れたものである。すなわち、音楽の認知過程を「先行音による期待と具体化された後続音による連続的な過程」と捉え、予測が実現された場合は快感情が、予測が不適切/実現が遅延する場合には不快感情がひき起こされると仮定したものである。両者を統合したモデルを構築した結果、実験結果の約7割を適切に評価できることが明らかになった。
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北星学園大学文学部 北星論集
巻: 55(2) ページ: 1-19
Proceedings of International Conference on Language, Culture, Literature and Education
巻: 23 ページ: 38-43
巻: 55(1) ページ: 1-9
Proceedings of 20th International Conference on Social Science & Humanities
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