研究課題
音楽家を被験者として本研究課題で考案した「イメージ演奏実験」を行い,機能的結合(functional connectivity)解析(Tanaka and Kirino, 2019)に引き続き,イメージ演奏中の聴覚野を中心とした機能的ネットワークの抽出を行った。イメージ演奏では実際の音は出さないが,演奏プランニングは脳内で行われる(Tanaka and Kirino, 2017)。音を出さないために聴覚野のネットワークがイメージ演奏においてどのような役割を果たすかは自明ではなかったため,本解析を行った。解析は安静時とイメージ演奏時のfMRIデータから,それぞれの条件下の聴覚野の機能的ネットワークの抽出と,安静時と比べてイメージ演奏時に有意に変化する聴覚野の結合性の抽出を行った。その結果,両条件下の聴覚野の機能的ネットワークは有意に違いが認められ,とくに右半球で顕著であった(安静時と比べてイメージ演奏時に結合強度が増していた)。聴覚野との結合強度が増していたのは,認知,社会,感情の情報処理に関わる部位であった。この結果は聴覚野がイメージ演奏にも能動的に関わっていることを示唆している。さらに機能的ネットワークの右半球優位性は,高次の統合的な情報処理を行っていることを示唆するものと考えられる。本研究によって,イメージ演奏時の機能的ネットワークはかなりの程度明らかになった。イメージ演奏という実験パラダイムを用いた脳機能的ネットワークのシステマティックな研究は,これまで行われてこなかった。この実験パラダイムはMRI装置の制約(騒音,不動)の中でも行える実験として考案したものである。被験者がすべて高度な音楽トレーニングを受けた音楽家・音大生であったため,質の高いイメージ演奏ができたと考えている。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)
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