研究課題/領域番号 |
15K00389
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研究機関 | 青山学院女子短期大学 |
研究代表者 |
植月 美希 青山学院女子短期大学, 現代教養学科, 准教授 (70431781)
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研究分担者 |
安藤 英由樹 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (70447035)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マルチモーダル / 言語処理 |
研究実績の概要 |
Kadota (1987, 1990) では、文章を黙読している際に、規則的なリズムを聞かせると、理解成績が向上することが示されている(ただし、不規則なリズムを聞かせた場合には成績は低下する)。また、文章を音読したり、文章の読み上げ音声を聞いたりしながら校正読みを行った場合に、誤字検出率が向上することが示されている(浅野・横澤, 2003)。一方、騒音を聞かせた場合には、短期記憶成績が低下したり、反応時間が増加したりするといったパフォーマンスの低下がみられる(佐伯他, 2003)。 これらのことから、読みの際に、複数の感覚からの適切な入力があった場合に処理がより正確に行われるが、不適切な入力があった場合には処理の精度が低下すると考えられる。そこで本年度は、そもそも文自体がリズムを持つ俳句などにおいて、規則的な聴覚刺激が俳句の味わいを深くする効果を持つのか、また、読み(黙読・音読・なぞり読み)との関連を、実験的に検討した。 実験の結果、規則的リズム音が印象評定課題や記憶課題において、ポジティブな影響を与えていたことは確認できず、Kadota (1987, 1990)とは異なる結果が得られた。印象評定課題においては、不規則リズムで音読した際に定型俳句の印象評価が良い傾向が見られたが、統計的に有意ではなかった。現代俳句は、無音音読、無音黙読、不規則黙読で好まれる傾向が見られたが、統計的には有意ではなかった。記憶課題においては、現代俳句、偶然俳句といった、現代の馴染みのある文法・表現が用いられ、かつ、もともと俳句としての特性が弱い刺激においては、成績が良い傾向が確認された。これらの結果から、もともとの言語刺激がリズムを持つ場合には聴覚的なリズム刺激の影響は小さいが、もともとの言語刺激がリズムを持たない場合には、聴覚的な刺激が記憶成績を良くする可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、障害者を対象とした実験を予定していたが、障害者の確保がかなり困難であるため、障害者を対象としないで研究課題について検討する方法を模索している。その一環として、本年度はマルチモーダルな刺激を与えた際の言語処理について検討を行った。当初とは異なる研究方法を用いているため、若干進捗状況に遅れはあるものの、最終年度に向けて実験等の準備を進めている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度に当たるため、本研究課題に関して、デジタル文章表示だからこそできる言語刺激の提示方法の提案と、それが読み手に与える影響について、総括的な検討を行う。具体的には、他者のリアルタイムな読みを反映したデジタル文章表示がどのような印象を読み手に与えるのかを検討する予定である。また、これまでの研究成果を発表するための準備を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今後の実験計画についてのディスカッションに予想以上に時間を割き、本年度中に購入予定だった実験機材の発注が遅れてしまったため、次年度使用額が発生した。購入する実験機材については、既にほぼ確定したため、次年度の早い段階で発注を行い、次年度使用額をその支払いに充当する予定である。
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