本年度は主に下記の2点について研究を行った。 1.これまで行ってきた、jump-diffusion項を持つ確率的非線形振動子(神経細胞のダイナミクスもこの振動子で近似される場合がある)に関する研究を論文として出版した。論文中で示した主要な項目は以下の通りである。①確率的振動子が一意解を持つことを証明した。②確率的振動子の状態が、ある時間後、どの状態に推移するかを表す推移確率密度の漸近展開を計算するため、その条件となる推移確率密度の非退化性を示した。③振動子のフルモデルと位相方程式の推移確率密度の漸近展開を計算した。位相方程式の推移確率密度の漸近展開の精度をモンテカルロ法で計算される推移確率密度と比較し検証した。④ジャンプ数が1回までであるが、数値積分に成功し、推移確率密度の特性を調べた。論文出版後、さらに、ジャンプ1回までしか数値計算ができなかった推移確率密度をジャンプが複数回入るまで拡張できるよう工夫し、その工夫によりどのぐらいの精度で推移確率密度を計算できるか検討した。 2.jump-diffusion項を持つ確率的非線形振動子に対し、その推移確率密度から統計的挙動を表す線形作用素を構築できる。この線形作用素の固有値、固有関数を計算するときの近似行列の要素数をなるべく少なくするため、適切な基底を選択し、線形作用素を展開することが必要となる。どの基底が、我々の線形作用素を展開するに当たり適切なのか検討を行った。
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