研究実績の概要 |
日本での異状死件数は,年間約16万人である.異状死の場合,その死因は監察医もしくは警察医などによって判断される.しかし,警察医は法医学の専門家でない場合が多い.そのため,死因不明を表す“心不全”の割合は,監察医は15.3%,警察医は71.9%と,大きく乖離している.この問題に対処するため,国も2012年6月15日に「死因究明二法律」二法を可決した. しかし早期に改善するには,警察医が死因を断定する際の援助となる情報が必要不可欠である.そこで本研究では,監察医が作成した検案調書の内容を分析することで,死因を特定するためのノウハウを知識化し,知識化した情報から死因究明マニュアルに相当するものの構築を目指し,実施したものである. 本研究の内容は,大別して2つの項目から構成される.1つは,通報書データベースを構築,所見知識データベースを構築,検査知識データベースを構築の3つからなる死因究明用データベースの構築部である.もう1つは,所見項目見当付知識を構築,検査項目見当付知識を構築,絞込検査項目見当付知識を構築からなる死因究明知識の構築である. 死因究明用データベースの構築部においては,取り扱うデータの性格上,生データでの学会発表は難しく,そのアルゴリズムを適用した研究成果を多数発表できた.死因究明知識の構築においては,死因数が1,000を超える膨大な数があるため,その全てにおいて検証できたわけではないが,入浴時およびその前後に死亡する要因に絞り込むことで,死因究明知識は構築でき,学会においても発表した.また,このことにより他の死因を究明する場合においても,入浴時およびその前後の死因究明知識を構築する手順と同様の手法で,,死因究明知識を構築できる可能性は示唆できた.
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