研究課題/領域番号 |
15K00396
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
真原 仁 千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00589830)
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研究分担者 |
藤田 伸輔 千葉大学, 予防医学センター, 教授 (20268551)
雨宮 隆 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (60344149)
櫻井 建成 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60353322)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 数理モデル / エイジング |
研究実績の概要 |
糖尿病において重要な役割をはたす膵臓のインスリン分泌能のエイジング効果を取り込んだ数理モデルを作成し、実際の診療に役立てるための基礎を作り上げることが本研究の目的である。膵臓にあるβ細胞は、インスリン分泌を起こす時に細胞の膜電位等が振動することが知られている。β細胞のインスリン分泌能は、この振動と深く関わっているため、振動がなくなると細胞のインスリン分泌能も失われると考えられる。ただし、単純に振動子が集まった系は、単純に正常に振動する振動子の数に比例してインスリンが分泌されるとは限らない。このことについて、振動子の集合体の振動現象を研究されている研究者(九州大学大同教授)と議論を行った。この研究者は、振動子の一部が機能しなくなっていった時に全体の振る舞いがどのように変化してゆき、振動がなくなるかを理論的に計算している。この研究者とβ細胞の集合体であるランゲルハンス島のエイジング現象についての議論では、振動可能なβ細胞の数とインスリン分泌能の関係を研究する必要性と方向性を確認することができた。 また、研究代表者の所属する千葉大学医学部附属病院地域医療連携部が主催する「在宅医療インテンシブコース」において、この研究内容を披露し、在宅医療に関わっている多職種の方々(ケアマネージャー、薬剤師、訪問看護師など)から、実際の現場の声を聞くことができた。これにより、数理モデルを机上のモデルではなく実際の現場に役立てなくてはいけないことを再確認するに至った。また、他の「在宅医療特訓コース」において、糖尿病の各都道府県における入院患者数と外来患者数の推移を政府統計から計算し示した。全国的に、年をおうごとに入院患者数が現象し、外来患者数が増加することがわかった。したがって、外来患者に対応していく数理モデルをつくる必要があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
エイジングの効果を数理モデルにどのように組み込むかを精査することに時間がかかってしまった。また、数理モデルの作成の他に在宅医療に携わる方々へプレゼンテーション等を通して、実際の需要にどのようなものがあるのかの声を聞くことができた。この声を聞くという作業は、当初の研究計画には入っていなかった。このため、研究計画が先延ばしになってしまっている。 しかしながら、この調査では、現場の貴重な意見を聞く機会に恵まれた。ここでは、在宅の現場で活躍されている方々の意見だけでなく、ご自身が糖尿病を患っている方の経験も聞くことができた。これらの数理モデルを実際の診療等に役立てる際のヒントを得た。したがって、研究自体は遅延しているものの、これらの聞き取りの経験により計画当初よりも実際の診療へ数理モデルを役立てる道が開けたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、エイジングの効果を数理モデルにどのように反映させるかの議論を重ねてきた。この議論により、エイジングの効果の重要性が再認識された。また、ランゲルハンス島内のβ細胞の結合強度を議論する必要があることがわかってきた。そこで、これまでの数理モデルにエイジングの効果とβ細胞同士の結合を考慮にいれたランゲルハンス島の数理モデルを、まず、作り上げる。さらに、このモデルのコンピュータシミュレーションを行うことにより、細胞のエイジングと細胞の結合の関係を議論してゆく。これにより、ランゲルハンス島のエイジング効果とインスリン分泌能の関係を議論してゆく。このモデルにより、ランゲルハンス島全体の内、何パーセントの細胞が振動を示さない場合に、ランゲルハンス島のインスリン分泌能がなくなるかが議論する。 さらに、昨年度のインタビューを踏まえるとともに、さらに現場の方々のインタビューをつづけ、どのような予測を患者や医師に提示すれば、実際の現場で役に立つのかを精査してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、糖尿病の数理モデルを作成するにあたっての議論やインタビューに時間を割いた。このため、数理モデルの構築までいたらなかった。このため、計上していたシミュレーション計算のためのパソコン購入を見合わせたため次年度に繰り越した。また、九州大学の大同氏との議論は、共同研究者である櫻井建成氏が千葉大学へ別の予算で招聘したときに行われた。このため、この議論にも予算消費がなかった。結論として、共同研究者である雨宮氏の旅費しか使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
数理モデルのプロトタイプを5月までには完成させる。この数理モデルの数値シミュレーションを行うために計算機を購入する。 その他は、情報取集や研究成果の発表のための出張費用として使用する。また、共同研究者である雨宮氏がこの研究に関連した海外の研究者を招聘するために使用する予定である。
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