研究課題/領域番号 |
15K00401
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 有己 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点助教 (10511280)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ノンコーディングRNA / 2次構造 / 遺伝子発見 / ゲノムワイド配列比較 |
研究実績の概要 |
近年機能を持つnon-coding RNAに注目が集まっており、その機能は構造に特徴付けることができる。そのため、従来のRNA遺伝子発見法では、局所的なゲノム配列比較を行って遺伝子候補領域を選択した後、RNAのシグナルとなる構造形成の可能性を調査する。ただし、最初に配列類似度だけで候補領域を選択するため、予測遺伝子が配列比較の結果に大きく依存する問題点が挙げられる。本研究では、可能なすべての構造集合の粗視化情報をもとに、ゲノム配列上で最初から構造を考慮した比較解析を高速に行うことで、新規RNA遺伝子を発見することを目的とする。これにより、従来予測法による偽陽性遺伝子の減少を含めた高精度のRNA遺伝子発見につながることが期待される。 今年度では、与えられた2つのRNA配列に対する可能な2次構造(塩基対の集合)情報を2進列で表現し、それらの内積を計算するアルゴリズムを実装した。Rfamと呼ばれるデータベースに登録されている、構造既知のRNA配列群(遺伝子)から構成された仮想ゲノム配列データをベンチマークデータとして、提案手法の構造類似度に関する識別能力を調査した結果、高い予測精度を実現することに成功した。これは既存手法よりも良い性能を示している。さらに、実行時間も既存手法と比較して大幅に短縮できることを確認した。以上の成果は、ゲノム配列中での推定RNA領域(ウインドウ)とそのステップ幅を変更しても傾向は大きく変わらないものであった。次に、実問題への応用として、開発手法をヒトとマウスの特定の染色体配列比較に適用することで、虱潰し法より大幅に探索空間を削減し、ノンコーディングRNA遺伝子発見に対する高い感度を達成することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の計画では開発手法をベンチマークデータ上で評価するまでであったが、先述のように、当初次年度に行う計画であった2次構造を考慮したゲノム網羅的配列比較に着手したため、当初の計画以上に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
上述のゲノム網羅的配列比較においてはリピート領域が含まれているため、それらを除去したデータで開発手法の性能評価を行いたい。また、配列類似度の高い領域を入力ゲノム配列から除去した場合に、構造情報に基づく本手法の有効性が見られるかを検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
高性能な計算機を購入することを予定していたが、開発プログラムの工夫により、通常性能程度の計算機を購入するだけで性能評価などの計算機実験を行うことができた。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画は以下の通りである。 物品費として、新たなプログラム作成および計算機実験等を円滑に行うためのデスクトップPC、ノートPC、関連するソフトウェア、図書を計上し、旅費として研究調査および成果発表のための国内旅費(本学東京間、計3回)および外国旅費(シンガポール)、その他として学会参加費および論文掲載費を計上した。
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