研究課題/領域番号 |
15K00404
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
網崎 孝志 鳥取大学, 医学部, 教授 (20231996)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 頑健性 |
研究実績の概要 |
受容体などタンパク質の機能はダイナミクスと深いつながりがある。分子動力学シミュレーションはその研究の主要な手法のひとつである。本研究は、シミュレーションにより得られるデータ(トラジェクトリ)の解析に利用する手法の開発に関するものであり、構造比較に用いられる構造の重ね合わせ法やダイナミクス解析の主力である主成分分析に改良を施し、外れ値の影響を受けにくい(ロバストな)手法を開発することを目指している。 平成27年度から平成28年度にかけて、ロバストな立体構造同時重ね合わせ法の開発を予定している。平成27年度は、そのベースとなる異分散性を考慮した同時重ね合わせ法として、以前開発した混合効果モデルに基づく手法をもとに、一般化最小二乗法(反復重み付け最小二乗法)に類する手法のコードを作成した。分散の推定は、とりあえず、標本分散をLedoitとWolfの方法で縮小する方策をとっている。それにロバストな性質を付与するために、何らかのL1ノルムを利用する方法を検討しているが、実現には至っていない。当初は考慮していなかった正規ラプラス分布による方法に理論面からは期待を持っているが、すべてのズレをL1ノルムで測る手法と同様に、単純で有効な実装法がみつかっていない。検討の結果、計画調書でもふれたL2ノルムとL1ノルムの折衷型が、現実的と判断するに至った。前述のコードをベースにして、小規模な改造で実現できると考えている。なお、将来のソースコードの公開と利用の簡便さを考慮し、同時重ね合わせなどに不可欠である特異値分解と固有値分解の独自の実装を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、外れ値について、原子単位のものを想定していたが、より必要なものは、分子単位で外れ値をあつかうものであると考え、それについて検討を続けた結果、正規ラプラス分布を利用する手法が利用できることがわかった。しかし、そのためには、これまで想定していなかった最適化用コードが必要であり、実現にはいたっていない。この検討に時間をとられてしまった。また、特異値分解コードの開発に、やや予定外の時間を要した。
|
今後の研究の推進方策 |
立体構造同時重ね合わせについて、当初計画では、通常用いられる二乗和(L2)ノルムが、形式上、二階層であることに着目し、その一方を平方根和(ある種のL1ノルム)とする折衷型の手法も開発する予定であった。この手法も、分子単位の外れ値対策という性質をある程度備えている。平成28年度はそのコードの開発と性能評価を再優先で行う。既に大部分のコーディングは完了しているので、当初予定通り、平成28年度中には完了できるように取り組みたい。また、その際、L1ノルム型の分子間変動への対応だけでなく、分散行列(対角行列)の成分の縮小法についても、検討を行い、分子内異分散性への対応も、より効果的な手法を開発する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況にやや遅れがあり、国内学会での成果発表を見送ったため、旅費を執行しなかった。代わりに、当初から購入予定であったワークステーションに、より高速な計算が可能となるようにGPUボードを装着した。これらが大きな変更点であったが、総計として、若干の次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度調達予定のシミュレーション用のコンピュータの調達に加えることで、少しでも効果の高まるような仕様の選定を行いたい。
|