研究実績の概要 |
1.異種プラットフォームでの超並列計算 FPGA,GPU, CPUを用いた非線形システム・シミュレータの開発を行った.各素子の使用状況を詳細に観察し,最適な並列処理を行うことにより,CPU単体で計算する場合よりも約30倍の高速化,および電力消費の97.1%の削減が達成された. 2.心臓数理モデルの解析 1.で開発したシステムを用いて,心室筋数理モデルにおける各種イオン電流のコンダクタンス値をパラメータにとり,それらの全てについて人工的に増減させた場合を詳細に解析した結果,ナトリウム-カルシウム交換電流のコンダクタンス値を増加させることにより早期後脱分極(EAD)が発生することがわかった.この場合も昨年度のL型カルシウム電流コンダクタンス値を増加させた場合と同様に,過渡的EADが発生した.slow-fast解析と分岐解析を融合させることにより,正常脈からEADの遷移やEADが発生したりしなかったりすることを周期的に繰り返す現象を数学的に解明することに成功した.更に,従来では難しかった過渡的EADの発生メカニズムについても,収束の遅い細胞外ナトリウムイオン濃度をパラメータ化して分岐解析を行うことにより以下がわかった:ナトリウム濃度が低い場合にはEADが発生し,濃度が時間と共に増加していきサドルノード分岐で表される臨界点を超えるとEADが消滅し正常脈へと遷移すること.異なる心室筋数理モデルにおいても,同様の現象を確認してモデル依存の現象ではないことを確認した.
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