研究課題/領域番号 |
15K00417
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
田村 義保 統計数理研究所, データ科学研究系, 教授 (60150033)
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研究分担者 |
染谷 博司 東海大学, 情報理工学部, 准教授 (00333518)
越久 仁敬 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (20252512)
岡田 泰昌 独立行政法人国立病院機構村山医療センター(臨床研究部), 電気生理学研究室, 室長 (80160688)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カルシウムイメージング / 呼吸リズム / ニューロン / グリア細胞 / アストロサイト |
研究実績の概要 |
アストロサイトは様々な脳領域においてカルシウム依存性機構によって神経活動を修飾していると考えられているが、呼吸リズム生成機構の中核を担うpre-Botzinger complex (preBotC)のアストロサイトが呼吸リズム形成においてどのような役割をしているかは明らかではない。モデル解析では、5つのニューロン群からなるニューロンネットワークのニューラルマスモデル(Neural mass model)を用いて、光遺伝子導入によりグリシン性抑制性ニューロンのみを選択的に刺激した時に起こる呼吸リズムのリセッティングをシミュレーションできるかどうかを検討した。 呼吸リズム形成メカニズムについて、ニューロンネットワークによるとするネットワーク説と、ペースメーカーニューロンによるとするペースメーカー説とが提唱されてきたが、いずれの説とも矛盾した実験結果が得られており、真のメカニズムは未解明であった。アストロサイトの役割が重要であることを確かめるために、延髄のアストロサイトによる呼吸リズム形成への関与を検討した。呼吸リズム形成の場である延髄腹外側部のpreBotC領域のニューロンとアストロサイトの活動を計測するため、新生ラット摘出脳幹脊髄標本を用いてカルシウムイメージングを行った。実験では、preBotC吻側レベルで延髄を横切断し、その断面からpreBotC領域にカルシウム蛍光色素を注入し、頚髄C4前根の吸息性神経出力を記録しつつ、共焦点顕微鏡でpreBotC領域の細胞活動を計測した。この結果、アストロサイトは、TTXでニューロン活動を抑えても自発活動を呈し、ニューロンに依存しない自律的なリズム形成能を有していることが明らかとなり、アストロサイトの呼吸リズム形成への関与が示唆されることが分かった。 成果については学会で報告するとともに学術誌で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アストロサイトの呼吸リズム形成への関与を明確にするという研究を順調にすすめており、新たな知見を得ている。また、成果発表も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで検討してきたニューロンネットワークモデルとアストロサイト振動子のモデルを疎に結合させたニューロン‐アストロサイトネットワークのシミュレーションを行い、アストロサイトが呼吸リズム形成においてどのような役割をしているかを検討する。 また、アストロサイトの自発振動能について、様々な薬理実験を行い、その自発振動メカニズムを特に細胞膜のイオンチャネルレベルで解明する計画であり、さらにその成果に基づいて、ニューロンとアストロサイトの相互結合により呼吸リズムが形成されるとするネットワークモデルに改良を施す計画も有している。 さらに、解析するためのソフトウェアの改良も目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験は順調に進んではいる。結果の解析についても順調ではあるが、既存の環境で研究を進めることができたために物品費の支出が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年であるために、とりまとめの実験と解析を行う。このための、物品費、諸謝金として支出する予定である。
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