研究課題
研究目的・目標:方法論「全脳ネットワークのリバースエンジニアリングによる全脳アーキテクチャ(全脳が情報を処理する仕組み)の解明」を提案・構築する;脳ネットワークに実際にこの方法論を適用してこれまで知られていなかった知見を導くことにより、その有効性を示す。方法:ネットワークの中の密につながったかたまり部分のことを「コミュニティ」とよぶ。全脳ネットワークの個々のコミュニティには、全脳アーキテクチャを構成する個々の情報処理モジュールが対応すると考えられる。全脳ネットワークのコミュニティ構造を明らかにすることにより、全脳アーキテクチャの機能構成を描き出す(本研究はこれを全脳ネットワークの「リバースエンジニアリング」とよぶ)。結果:研究期間の前半に、ネットワークからコミュニティを抽出する新しい方法を構築した。この方法(Modular Decomposition of Markov chain, MDMC)は、ネットワーク上のランダムウォーク(マルコフ連鎖)のモジュール分解を定式化することに基づく。MDMCは遍在的コミュニティおよびその階層構造を抽出できることを特徴とする。全脳ネットワークのコミュニティの構造は遍在的であると予想されるので、MDMCは全脳ネットワークのリバースエンジニアリングにまさにうってつけと期待される。最終年度に、Allen Brain Atlas (http://connectivity.brain-map.org/)のマウスコネクトームのデータを獲得し、これにMDMCを適用した。視覚野において、背側経路と腹側経路を遍在的コミュニティとして同定できることを示した。さらに、腹側経路が主にフィードフォワード結合からなることを示した;このような結線構造は、オブジェクト認識に高い性能を示す深層学習のニューラルネットワークアーキテクチャを想起させる。本研究により、ヒトやサルと同様に、マウスも視覚野に背側経路と腹側経路を備えることがわかった。
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Applied Network Science
巻: 4 ページ: 17 pages
https://doi.org/10.1007/s41109-019-0133-4