研究課題/領域番号 |
15K00422
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
新谷 虎松 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00252312)
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研究分担者 |
大囿 忠親 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90324475)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ウェブインテリジェンス / ウェブ協調作業 / リアルタイム同期 / HTML5 / 描画アルゴリズム |
研究実績の概要 |
本研究では、図形描画が多いWebアプリケーションにおけるリアルタイムな協調作業の実現を目的として、Webの実行環境および描画内容に対する適応型同期最適化アルゴリズムの実現を目指す。 図形描画のためのHTML5 Canvasは、リッチなWebアプリケーション構築の上で大きな利点があるが、協調作業支援を目的としたリアルタイムなWeb同期を実現する上で、再描画時の描画コストが課題である。本研究では、リアルタイムなWeb協調作業のための同期アルゴリズムを実現するために、HTML5 Canvasにおける描画オブジェクトの再描画処理の高速化を実現した。 具体的には、再描画処理に必要な時間を一定時間内に抑えるための新たなアルゴリズムを提案/実装した。ここでは、(1)事前に描画オブジェクトの更新頻度が未知、(2)描画オブジェクトの前後関係の維持、および(3)HTML5 Canvasオブジェクト数の増加は描画コストを増大、の3つの点を考慮した上で、さらに各描画オブジェクトの描画コストが定数時間であると仮定してアルゴリズムを設計/試作した。本アルゴリズムにおいて、リアルタイムな同期アルゴリズムに必要な描画オブジェクトの描画の最適化を、階層化された HTML5 Canvas に対する描画オブジェクトの最適割当を決定する問題として定式化した。ここで、描画オブジェクトの描画の前後関係の維持を実現するために、描画オブジェクトの前後関係を維持したまま、すべての階層の描画コストの期待値が均一化されるようにグルーピングすることで、最悪時の描画コストの上限を抑えるための手法を開発した。関連する業績を、論文誌4編および国際会議1編として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画において、HTML5 Canvas を階層化する際の、描画オブジェクトのグループ化アルゴリズムの設計を目標としており、具体的に次の4つの方策を計画した。 すなわち、方策A)初期状態において、|L| < k(kは定数)となるように相当数のCanvas 要素Lを生成し重畳表示する。方策B)描画オブジェクトおよびCanvas 要素Lの前後関係を考慮して各描画オブジェクトを各Canvas 要素Lに割り当てる。方策C)描画オブジェクトの増減に対して、各Canvas 要素Lの分割/結合を行う。方策D)複数の再描画処理をまとめる。 本年度は、上記すべてを満たすことにより、再描画処理に必要な時間を一定時間内に抑えるための新たな描画アルゴリズムを実現した。以上の理由により、現在までの進捗状況は、順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの検討結果をもとに、さらに設計仕様の改良および詳細化を追求する。ここでは、【階層型描画アルゴリズムの実現】の成果の精緻化と、その研究成果に基づいて【適応型同期最適化アルゴリズムの実現】および 【リアルタイム協調作業用アプリケーションの試作と評価】の研究課題に着手する。 具体的には、前年度に実現した階層型描画アルゴリズムを利用したシステムを試作・評価する。本試作システムでは、本アルゴリズムの多様な状況における性能を評価するために、急激な性能低下を引き起こすHTML5 Canvas 要素Lの個数、および描画オブジェクトの更新頻度の分布を調整可能にする。さらに、実行環境に対して適応的に同期内容および描画方法を最適化するための新たなアルゴリズムを実現する。具体的には、多様な実行環境における同期手法の最適化のためのモデルを明らかにし、そのモデルに基づく最適化アルゴリズムを設計する。 描画内容と実行環境を考慮して適応的に最適な同期手順を導出するためには、HTML5 Canvas の最適な階層構造、および実行環境に適した同期情報の表現形式を決定するためのパラメータをオンラインで高速に最適化するためのアルゴリズムを実現する。ここでは、実行環境における不確定性をリアルタイムにパラメータ化する課題を克服する必要がある。具体的には、同期情報の抽出、同期情報の決定、同期情報の配信、および同期内容の描画の全行程にわたり全体的な最適化を行う。さらに、開発したアルゴリズムのライブラリ化、および同期用サーバを実装し、本手法の既存アプリケーションへの組み込みを可能にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりも研究機材を安価に調達できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度において評価実験環境構築用機材の拡充に充てる。
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