研究課題/領域番号 |
15K00423
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浅野 泰仁 京都大学, 情報学研究科, 特定准教授 (20361157)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 知識発見 / 知識体系化 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,潜在的関係の知識を発見するための基盤技術の開発と,実際の異種データを結びつける応用の双方を行った.基盤技術としては,本研究が発見対象とするエンティティ間の関係はテキストデータやネットワーク構造に含まれていると考えられるため,これらを解析する基本的な手法について研究した.特に,同じトピックに関する複数文書中の対応する部分を整理する手法と,ネットワーク上におけるエンティティを結びつける方法と関連があると考えられる合流経路モデルの構築が挙げられる. 実データへの応用としては,まず,商品のレビューデータから(1)評価者と商品の関係から「特異な評価者と早期レビューからのサマリ予測」を行う手法と,(2)「商品の機能とユーザの使用目的」の関係についての知識を発見する手法を開発した.次に,文書のマンガ化を支援するために,文書と脚本の構造的関係を表す知識モデルを構築し,(スライドなどの)XML文書を教師・生徒による対話型脚本に変換するための候補提示手法を提案した.さらに,大学レベルの標準カリキュラムデータとオンラインコースのシラバスデータから,カリキュラムで定義されている知識オントロジーと個々のシラバスとの関係を発見する手法を提案した.(1)(2)の成果は英文論文誌に採録された.また(2)については,The Second International Conference on Data Mining and Big Data (DMBD 2017)において,Best Student Awardを受賞した. 経路モデルについては,従来の協調型輸送では考えられていなかった「中継可能」な協調型配送のモデルを構築し,問題の理論的性質を明らかにするとともに,厳密アルゴリズムを構築した.これについては本年度さらに発展させて国際学会等に投稿予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記概要に述べたように,商品のレビューデータから(1)評価者と商品の関係から「特異な評価者と早期レビューからのサマリ予測」を行う手法と,(2)「商品の機能とユーザの使用目的」の関係についての知識を発見する手法については,開発と投稿が年度内に完了したため,概ね順調と考えられるが,これらの論文が採録された論文誌の発行は本年度にずれ込み,そのため研究期間の延長を願い出ている.漫画作成のためのXML文書を教師・生徒による対話型脚本に変換するための候補提示手法は国際学会・論文誌への採録がなされ,順調と考えられる.カリキュラムで定義されている知識オントロジーと個々のシラバスとの関係を発見する手法については,英文論文誌に投稿したが採録には至っておらず,論文の修正を続けている.中継可能な協調型配送のモデルと厳密アルゴリズムの開発は順調ではあるが,平成29年度に開始した研究であるため,成果が採録されるためには今少しの時間を必要とすると考えられる. 結論として,一部課題の研究完了には本年度まで時間がかかると予想されるが,平成29年度までにも多くの研究課題について成果が得られ,完了していない一部課題についてもモデル構築や手法開発には成功しているため,概ね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
まず,上で挙げた平成29年度未完であった課題について,成果を発表する段階まで進める.具体的には,カリキュラムで定義されている知識オントロジーと個々のシラバスとの関係を発見する手法については,さらなる改良と英文論文誌への投稿を行う予定である.さらに,中継可能な協調型配送に関しては,厳密アルゴリズムの実用限界の実証とその結果に基づく近似アルゴリズムの開発を行い,実際のトラフィックデータに基づく配送用データセットを構築して,これらのアルゴリズムの性能検証を行う.そして得られた成果をまとめ,国際学会への投稿を行う予定である.また,本研究で得られた手法をその他のデータに応用する方法についても検討する.例としては,細胞間の関係データ等を予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
前項に記したように,平成29年度に投稿した論文の掲載が本年度にずれ込んだことによる論文掲載料の支払い,及びカリキュラムとシラバス間の知識発見・中継可能な協調型配送モデル構築の成果発表のために予算を使用する必要が生じた.
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