研究課題/領域番号 |
15K00431
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
高野 知佐 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (60509058)
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研究分担者 |
會田 雅樹 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (60404935)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ネットワーク分析 / ラプラシアン行列 / ノード中心性 / ランダム行列 |
研究実績の概要 |
本研究では,SNS 分析に関して大規模性や複雑性に起因する困難を克服するため,グラフスペクトル,ランダム行列の考え方を組み合わせた分析法を確立するものであり,以下の課題に分けて研究実績を述べる. [ラプラシアン行列の固有値を用いたマルチスケールネットワーク分析法] 我々はこれまで,ネットワーク上のアクティビティの伝播を記述するための振動モデルを検討し,多様なネットワーク状況を反映可能な一般化されたノード中心性指標を提案してきた.本課題では,次数中心性や媒介中心性だけでなく,PageRank や固有ベクトル中心性等,全く異なる定義のノード中心性を同じ枠組みで解釈できることを示した.また,行列の固有値及び固有ベクトルがネットワーク構造に関する全ての情報を含むという事実に着目し,固有値及び固有ベクトルから間接的にネットワーク構造を得る方法について検討した.ネットワーク上の強制振動ダイナミクスにおける共鳴現象を利用して Laplacian 行列の固有値を推定する手法(ネットワーク共鳴法)を提案し,高い精度で推定が可能であることが示した. [ランダム行列によるユーザネットワーク分析法] 本課題では,ネットワーク構造を表す行列をランダム行列として与え,ランダム行列の普遍的な性質を用いて大規模社会ネットワークの特性を分析する方法の確立を目指す.先行研究においては,ある条件下で,リンクに重みのないグラフの正規化ラプラシアン行列の固有値密度分布が半円則に従うことが報告されている.本課題においては,リンクの重みを乱数で与えたグラフの正規化ラプラシアン行列の固有値密度分布を評価し,固有値分布が半円則を満たすための条件を実験的に調査した.さらに半円則が成り立つ場合の社会ネットワーク分析の応用例についても検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績で述べたように,それぞれの課題について順調に成果を得ている.また上記課題について成果の一部を国内研究会,学会,国際会議にて発表しており,計画通りに進捗していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
これまで,振動モデルを用いて一般的なノード中心性を表現できることを示してきたが,ネットワーク上の振動モデルを一般の有向グラフに拡張すると,ネット炎上のダイナミクスが記述可能であることがわかってきた.今後,この枠組に基づき,ネット炎上の発生を防止する技術について検討する予定である.また,提案している拡張ノード中心性をネットワーク仮想化技術(具体的には,論理NWの構成ノードの抽出)に応用することで転送効率の高いネットワーク構築技術を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた具体的な評価実験や学会発表の計画に対して,基礎的な理論モデルの検討がより優先度が高いと判断し,実施した.そのため,研究計画で予算計上していた計算機実験や学会発表は翌年度に実施することして,当該年度は理論モデルの発展に注力した.これによって次年度使用額が生じたが,計画の遅延によるものではなく,研究の本質に関わるより重要な基盤を発展させるために必要な,戦略的な研究スケジュールの見直しである.
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度で実施しなかった本格的な計算機実験を実施し,またそれに関連した研究成果の発表を行う.当該年度で到達した上記成果により,振動現象モデルを用いた拡張版ノード中心性の理論モデルの整備が進んでいる.当初計画時点よりも見通しの良い評価実験が実施でき,当該年度で実施予定だった評価検討と翌年度分の研究計画を合わせて実施可能であると考えている.前年度と同様かそれ以上の成果が生まれると予想しており,外部発表による旅費を拡充する意味で必要である.
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