研究課題/領域番号 |
15K00439
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
羽倉 淳 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 准教授 (30305289)
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研究分担者 |
藤田 ハミド 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 教授 (30244990)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高度交通システム / 運転者支援 / 交通事故リスク予測 |
研究実績の概要 |
本研究は,特定の運転者に対してパーソナライズされた事故リスクについて教示する運転支援システムの構築を目的とする.平成28年度は(1)客観的事故リスク予測部の構築,(2)運転者固有事故リスク予測部の構築を行なった. (1)に関しては,昨年度より手法を大きく見直し,交通事故に関する統計データだけではなく,それに関連した複数の統計データを併合して,特定の個人が持つ職業,年齢,性別といった属性毎,また,時刻,曜日や道路形状といった環境要因毎に事故リスクを算出し,事故リスクを合算することで,個人のある状況下における事故リスクを算定することとした.これにより,事故の事例数が比較的少ない場合にも,事故リスクが算定できるようになった.また,個人や状況を特定する属性,特徴が増えた場合にも容易に対応可能となった.さらに,個人の性格による事故リスク比を実験的に求めた他の研究者による研究データを本手法に反映することができることから,性格を反映したリスク計算が可能になることが期待できると考えている. (2)に関しては,近年,運転中の心臓発作などによる事故が増加していることから,心電データから不整脈と冠動脈疾患を検出方法の構築を試みた. 冠動脈疾患の検出では,心電波の振幅および持続時間の微小変動から自動的に異常を検出する.本手法では、離散ウェーブレット変換(DWT)と様々な非線形特徴抽出技術を用いて特徴抽出し,これらの特徴の様々な分類器による分類を行なった. 冠動脈疾患の場合,KNN分類器を使用して98.67%の最高精度を得た.不整脈の検出においては,心電データの拍動を13の非線形特徴を用いて抽出され,これらを決定木とKNNにより分類した.その結果,決定木では,正確度96.3%, 感度 99.3%, 特異度84.1% をKNNでは,正確度93.3%,感度97.5%,特異度75.3%を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に今後の課題として挙げていた,入手した事故データに同じ状況の現場が少なく,特徴を得るだけの統計データとして利用することが困難であるという課題を,現場の特徴,運転手の属性ごとのリスクを算出し,それらを統合する手法により,解決を図った.しかし,評価に関してはシミュレータ酔いの問題に未だ効果的な解決策は見出せていない. 一方,運転者固有事故リスクに関しては,運転中の,主に心臓疾患の検出を行なってきており,臨床データによる実験では,不整脈と冠動脈疾患を検出において成果を上げているといえる. 客観リスクの予測では,データを利用する方法を見出せたこと,運転者の固有のリスクに関しては,運転中の心臓疾患の検出で成果を上げていること,もともと評価は主に平成29年度に実施予定であったことから,概ね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
ドライビングシミュレータや実車による実験には,ドライビングシミュレータ酔いや安全面での問題があるため,これらの規模を縮小し,状況を限定して実験を行なっていく予定である.一方,これまで入手している岩手県内の交通事故の統計データや年齢,性別,職業別免許取得者数,地域ごとの免許取得者数といった統計データを活用した評価方法を検討していきたいと考えている. また,運転者属性,環境情報,地理データといった属性を増やして,精度の工場を図っていく予定である.さらに,引き続き,運転者に固有のリスク予測に関しては,心臓疾患関連の研究を進めると同時に,運転者に関する新たな固有データと交通事故の関係を新たに探求し,これらもシステムに組み込むことを検討していく予定である. これらの実施に際して,新たなセンサー類やMATLABのツールボックスの導入を検討している.また,実装にかなりの時間を要するために,仕様が定まらずこれまで実施してこなかったシステムの実装を外注する方向で考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
客観的リスク予測部を一から見直し手法を一新したために,予定していた実験や開発の外注を実施しなかったことが理由としてあげられる.
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次年度使用額の使用計画 |
運転者固有の運転リスクに関する新たなセンサー類やMATLABのツールボックスの導入によってリスク推定のパーソナライズ部を強化したいと考えている.また,システム開発の実装の一部を外注することに利用し,開発プロセスのスピードアップを図ることを検討している.
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