本研究では,特定の運転者に対してパーソナライズされた注意すべき箇所を教示する運転支援システムの構築を目的としている.平成30年度は,(1)車内からの映像を用いて事故に影響を与える自動車,歩行者,信号などの対象物を抽出する手法の検討と(2)抽出された対象物の運転者から見た配置状況から数秒後に注意すべき場所・対象物を予測する手法の構築を行った. (1)に関しては,ドライブレコーダー等の車載カメラからの映像内に映っている自動車,歩行者など事故の要因となりうる対象物の位置と種類を同定する手法を検討した.様々な一般物体検出手法から,実時間性に優れたYOLOを選定し,目的どおりに機能することをドライブレコーダーで録画した映像を用いて,平成30年度に購入したパソコン上で確認した.また,計算コストのかからない方法でドライバーが数秒程度先の事故を防ぐために,注意をむけるべき方向,対象物を同定し,注意喚起ができれば,本研究の目的である事故リスク低減に寄与する. そこで(2)では,機械学習によってドライバー視点の事故前の状況を入力とし,数秒後に事故につながる対象物とその方向を分類する手法を構築した.ドライバーの視野を5分割し,それぞれの分割範囲に4種類の対象物が存在するか否か(20特徴),および,視界内の信号機,横断歩道等6種類の存在の有無の計26特徴を入力とし,危険の可能性がある方向と注意をむけるべき対象を,SVM,KNN,決定木,Xgboost,NaiveBayes,Neural Networkといった手法により分類し比較した.これらの学習には,2社から発行されているドライバーの教育用映像(DVD5枚分,計350事例)を用いた.これらの映像から人手で特徴抽出し交差検証法で比較した.予測精度は方向に関してはSVMで最高値50.9を,対象に関しては,Xgboostで最高値70.0を得た.
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