研究課題/領域番号 |
15K00442
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
斎藤 進也 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (70516830)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | データ視覚化 / 法心理学 / 人文情報学 / 3次元CG / インフォグラフィックス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、独自のデータ視覚化ツールの開発を通じ、知識マネジメントに有用な「視覚的データ管理手法」を確立すること、およびその社会的活用方法を提示することである。 当該年度では、視覚化システムの基盤となるプログラムの再設計をおこない、システムの汎用性を向上させた。あわせて、社会実装における実効性と適用範囲の拡大を実現するため、ウェブ情報学の観点からコンテンツ・マネジメント・システムとしての機能を強化した。 本研究おける既存の視覚化エンジンは、Adobe Flash(ActionScript)を用いて実装されている部分が多いが、現在のWeb技術のトレンドを踏まえ、HTML5およびJavaScriptによるプログラムの書きかえを一部開始した。その過程において、これまでの立方体型の3Dビュアーに加えて、新開発の2次元CGの情報ビュアーを併用することで、データセットの把握がより効果的におこなわれることが示唆されるという副次的な成果もあった。 そして、主に法心理学のフィールドを対象に、有用性を経験的に検証するための試験運用をおこなった。本研究では従来より、裁判プロセスを支援するツールとしての可能性を模索しており、今回新たに「松川事件」を題材とした視覚的アーカイブの構築を独自の3次元ビジュアライゼーション技法をもちいて実施した。 さらに、本研究に関連するアウトプットを、International Conference on Culture and Computing 2015、The Japanese Association for Digital Humanities, Conference 2015など様々な国内外の学会・研究会にておこなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度における研究活動において、3年間の土台となる【システムの基本デザイン】および【基本機能の実装】が概ね完成し、さらに、【実践的活用の開始】というフェーズまで研究を進めることができた。そして、研究計画はより明瞭なものとなり、以後2年間に実施すべきシステム上あるいは運用上の課題を具体化することができた。これにより、データセット間の関係性の視覚的把握支援や2次元CGとの併用の有用性の検証などの新たなテーマに着手できたことも次のステップにつながる成果だといえる。 また、採択後初年度の活動ではあったが、研究のアウトプットを国際/国内学会において盛んにおこなうことができた。加えて、法学者・心理学者と共同で立方体情報ビュアーに関するシンポジウムを開催し、今後の学際的な展開についてのビジョンを共有できたことも進展のひとつといえる。 一方で、地域アーカイブと経営情報に関するデータ視覚化の取り組みについては、若干の進捗の遅れもみられた。これらの点を総合すると、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
2015年度の研究活動において得られた知見を踏まえ、今後は、3次元CGをもちいた立方体情報ビュアーの表現力向上と社会活用デザインを深化させていくとともに、(新たに見いだされた手法である)2次元CGとの併用の有用性について検討を進めていきたい。そして、知識マネジメントおよびMIS(Management Information System)の観点を取り入れ、人とデータの関係性をより包括的にデザインすることによる、新たな「視覚的データ管理手法」の確立を目指す。 また、そうした手法を用いることによる「データセット全体の把握支援効果」、「情報の階層性の把握支援効果」、「プレゼンテーション支援効果」といった諸効果を検証するための実験デザインを具体的に策定していく予定である。 システム運用については、これまで盛んにおこなってきた法心理学分野の研究者との共同以外にも、人類学・歴史学分野の研究者との共同を積極化させ、応用研究としての実効性を強化していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
参加した国際学会が京都市内での開催であったことで、旅費が予定より小額に収まり、予算枠の一部(146,081円)を次年度に繰り越すこととした。
|
次年度使用額の使用計画 |
繰越額(146,081円)については、次年度の国際学会参加費として充当する予定である。
|