研究課題/領域番号 |
15K00442
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
斎藤 進也 立命館大学, 映像学部, 准教授 (70516830)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ビジュアライゼーション / 情報デザイン / 時空間情報 / VR |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、独自のデータ視覚化ツールの開発を通じ、知識マネジメントに有用な「視覚的データ管理手法」を確立すること、およびその社会的活用方法を提示することである。 当該年度では、立方体3Dビュアーの開発の中でも、特に「3D年表(タイムライン)表現」の開発に力点を置き研究を進めた。 2016年度において得た知見をもとに、ゲームエンジン「Unity」を活用した3D年表作成支援プログラムの開発を具体的に展開した。VRを用いた年表表現の精緻化を図るとともに、天球カメラで撮影した360度画像をビュアー内に組み込む機能を実装した。これにより、特定の場所(空間)に関するビューと年表情報を統合する独創的な時空間情報のオーサリング環境が構築された。 これを活用して、実際の大学を対象とした「VR学園史コンテンツ」を試作するなど実践的なシステム運用をおこない、開発だけでなく活用についてもヒューリスティックな知見を得ることができた。試験運用の結果から、特定の場所についての360度画像と時系列データ(タイムライン)のVR環境下でのオーサリングは、大学のみならず中規模の施設・場所での各種情報を統合し、一般に公開する手段として意味を持ちうることが示唆されている。 そして、国際会議(Replaying Japan 2017)をはじめとして学会・研究会において関連成果のアウトプットを積極的におこなった。なお、当初の予定としては、2017年度をもって本科研費プロジェクトを終了する予定であったが、「VR年表機能」の完成にさらに一定の時間を要するということに鑑み補助事業期間を1年延長することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度、2016年度においては、3次元CGを用いたデータ視覚化の基盤作りとデジタルゲーム開発のノウハウの導入や質的研究法TEMの援用といった方法論的な開拓に力点が置かれた。そして2017年度は、そうした過年度得た開発の土台、活動のビジョンを具体的に発展させるため、VR年表機能の強化や天球カメラによる360度画像に対応したオーサリング機能の新規実装がおこなわれ、着実な技術的進展があった。 また、実際の大学を対象とし、キャンパス構内の複数の360度画像とさまさまな時系列情報を融合した「VR学園史コンテンツ」を試作するなど実践的なシステム運用についても確実な進捗があった。 ただし、VR年表機能については、3D空間の特性をいかし複数の年表をレイヤー別に設定するタイムラインの多層化の実現などが未実装であり、今後の課題として残った。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間を1年延長した主たる理由であるUnity(ゲームエンジン)を用いた3D年表表現の完成を必須課題として進める。その際にポイントとなるのは、VR技術をいかに有効活用し、3D年表だからこそ可能となる時系列データに対する認知を提供しうるかである。この点については、提携している民間企業とも一部共同で知見を共有しながら、着実に成果をだせるようにする。 加えて、人文・社会科学系のデータベースと実践的に連動するよう運用面でも最終年度にふさわしい成果を導出していく。また、データ閲覧環境に適度なエンターテイメント性を付与し、各種データベース/アーカイブを研究者だけでなく一般向けに開くためのリデザイン手法としての提案をおこない、「データベースの活用論」への貢献を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題では、3D-CGを活用した独自のデータ視覚化システムの構築を行っているが、2017年度よりプログラム開発環境としてゲームエンジン「Unity」の導入を本格化した。これによって、より多彩なインタラクティブCGの表現が可能になり、現在、VR機能などの追加実装をおこなっている。こうした新機能の有用性を検証するため、補助事業期間の延長することとなった。これにともない、次年度使用額が生じた。また、VR機能の追加実装とそれに関わる学会発表などについて助成金を使用する予定である。
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