研究課題/領域番号 |
15K00449
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
長澤 多代 三重大学, 地域人材教育開発機構, 准教授 (30346944)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 情報リテラシー教育 / 大学図書館の学習・教育支援機能 / 大学教育における教員と図書館員の連携 / 教職協働 / 専門職連携 / 高等教育開発 / ケース・スタディ / グラウンデッド・セオリー |
研究実績の概要 |
本研究では,大学教育における教員と図書館員の連携構築に関する比較研究の一環で,米国のミシガン大学,カナダのウエスタン大学,フィンランドのタンペレ大学のケース・スタディを行う。その目的は,複数の大学のケース・スタディをもとに,教育の質保証の文脈において,教員との連携を構築するための図書館員による戦略とこれに影響を与える図書館内外の条件について,次に示す3つの研究課題を明らかにし,各ケースのモデルを完成させることにある。(1)大学図書館が実施する学習支援や教育支援において,教員と図書館員はどのように連携しているのか,(2)図書館員の教員に対するアプローチの中で,何が教員と図書館員の連携の構築を促す要因となっているのか,(3)教員と図書館員の連携の構築を促す大学図書館内外の要因は何か。 文献調査及び訪問調査をもとに,各ケースのモデルを構築する。これに加えて,完成した各ケースのモデルを,これまでの研究をもとに構築した米国のアーラム・カレッジ及びカナダのクイーンズ大学のモデルも加えて比較分析することにより,図書館員による教員との連携構築の戦略について類型の枠組みを構築する。初年度である2015年度には,ミシガン大学で訪問調査を行った。現在は収集したデータを分析し,公表の準備をしている。 2016年度には,タンペレ大学において訪問調査を行った。図書館の管理職や図書館員に加えて,部局でカリキュラム委員を務める教員や部局のカリキュラムコーディネーターにも聴き取りを行い,関連する内部資料についても収集した。また,比較ケース・スタディについては,国際学会で成果の一部を口頭発表し,論文としても公表した。これに加えて,大学教育における教員と図書館員の連携構築についての理論的な基盤を得るために文献レビューを作成し,国内の学会誌に投稿した。この論文については採択され,公表の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,米国のミシガン大学,カナダのウエスタン大学,フィンランドのタンペレ大学のケース・スタディをもとに,教員との連携を構築するための図書館員による戦略とこれに影響を与える図書館内外の条件について各ケースのモデルを完成させること,ケース間の比較分析をもとに,教員との連携構築のための図書館員による戦略に関する類型の枠組みを構築することである。この目的を,次の計画によって達成する。(1)これまでの調査によって文献調査はほぼ完了しているために,訪問調査(いずれも追跡調査)によって,ミシガン大学,ウエスタン大学,タンペレ大学のモデルを完成させるために必要になるデータを収集する。(2)グラウンデッド・セオリーの手法を用いて,各ケースのモデルを構築する。(3)上記の3つのケースのモデルと分析済みの2つのケースのモデルの共通点や相違点を比較分析し,教員との連携構築のための図書館員による戦略に関する類型の枠組みを構築する。 2016年度には,タンペレ大学の追跡調査を実施し,関係者への聴き取りや内部資料の収集などをもとに,モデルを構築するために必要になる更なるデータを収集した。現在は,収集したデータを整理し,内容分析を進めているところである。2016年度に収集できなかったデータもあるために,これについては2017年度に追跡調査を予定している。それ以外の点では,ほぼ計画どおりに進んでいるために,「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度には,カナダのウエスタン大学の訪問調査(追跡調査)を実施する。調査の時期として,2018年2月を予定している。ここでは,教育支援センター(Teaching Support Centre)の新任の情報リテラシー・コーディネーター,新任のセンター長,前任の情報リテラシー・コーディネーター,前任のセンター長への聴き取りや内部資料の収集をもとに,情報リテラシー・コーディネーターと教育支援センターとの関係を中軸としながら,大学の教育活動における教員と図書館員の連携構築に関するデータを収集する。これによって,前任の情報リテラシー・コーディネーターが教育支援センターに配置された2004年からこれまでの経緯を明らかにすることができると考えている。 これに加えて,フィンランドのタンペレ大学の追跡調査も実施し,医学系の部局のカリキュラム委員を務める教員や社会科学系の部局のカリキュラムコーディネーターへの聴き取りなど,2016年度に収集できなかったデータを収集する。 また,比較研究の一環として,これまでのケース・スタディをもとに構築したモデルと大学教育における教員と図書館員の連携構築の理論的な基盤となる概念枠組みとの関係についても比較分析を進める。その成果については,2017年度に図書館情報学関係の国際学会で口頭発表をする(2017年9月:確定)。
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次年度使用額が生じた理由 |
フィンランドのタンペレ大学の調査について,2016年度中に2回の訪問調査を実施することを予定していた。だが,2017年度にフランスで開催される国際学会で口頭発表することになったために(2016年の時点では,それが予想されたために),2016年度に実施する訪問調査を1回に変更した。2回目の訪問調査については,2017年9月に予定されている国際学会の旅程に併せて実施することによって,旅費を有効に使用することができると考えて,繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度の繰り越し分については,2017年度に予定している2回目のタンペレ大学の訪問調査のための旅費として使用する。
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